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短編小説  作者: ま行
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吸血鬼

 血を吸う怪物は悩んでいた。吸血鬼と言えば今やメジャーな怪物になってしまったからだ、弱点や生態、有名な逸話やそのすべてがもはや白日の下に晒されている。生きにくい、いや自分を生きていると表していいのか、そんな事すらも吸血鬼には悩み事になっていた。


 夜、吸血鬼がふらふらと歩いている、最近はあまり血にありつけていないからか、何だか力が出ない、もうどんな動物の少しだけの血でもいいから味わえないかと思っていると、交通事故にあって弱っている猫がいた。轢いた人間はどうやらそのままにして逃げたらしい、酷いやつだ。助かるか分からなくても、その努力を怠るとは責任感の欠片もない、しかし吸血鬼にもその状況をどうにかできる方法を持ちえていなかった。


 ゴクリ、唾を飲み込む音が自分から聞こえる、いや駄目だ。自分を必死に叱りつけて律する。いくら自分がお腹が空いているからといって、今力尽きようとしている猫の体から流れる血を啜ろうだなんて、そんな事はしてはいけない事だ。


 吸血鬼はふらつく体を必死に動かして、猫の元に行く、吸血衝動に駆られるが、それを内ももを強く殴りつけて痛みで誤魔化す。猫は怪我をしているものの、手当さえすれば助かるかもしれない、吸血鬼は身につけている服や布を破いて傷口を塞ぎ、傷口から流れる血を抑えて止血した。猫の出血が止まり、考えうるだけの手当は施した。絶対に不十分ではあると思ったが、吸血鬼の体力はもう限界だった。バタリと倒れてそのまま目を閉じる、暗くなる視界の端の猫を最後まで見つめながら、お前は助かれよと願いながら意識を手放した。


 猫は目を覚ました。体中が痛んだが、どうやら自分の命が助かった事に気が付いた。傍らに何か灰のようなものが風に吹かれて空へと舞っていく、太陽に向かっていくそれを猫は何故か悲しい気持ちで見送った。

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