猛スピード
走る走る走る。兎にも角にもただひたすらに走り続ける。目的も目標も目測もどれもこれももう忘れてしまった。ただただ前へ進む、戻る事はないと自分に言い聞かせて走る。いつからだろうか、自分が前に進んでいると気が付いた時はいつだっただろうか、それももう分からない程に進んできた。
止まれないと知って嘆く、止まりたいと願って落胆する、それでも進むしかないと知り覚悟する。こうして長く長く進んできて、後ろを振り返った時に何があるのだろうか、それを考えると怖くて振り返る事が出来なかった。ただひたすらに考える事を止めて進め、自らにそう言い聞かせた。
ある時突然息苦しくなって止まる。膝に手をついて下を向き、ぜぇぜぇと息を荒げて呼吸を整える、ああもう駄目だ。そう思ってとうとう後ろを振り返ってみると、自分が走ってきた後ろには長い長い道が出来ていた。幾重にも踏み固められた道が出来ていて、そこを走る人がいた。
その人も息を荒げて走っている、だけど自分が通った道を走っている分少しだけ楽そうだ。それを見たら何だか自分の走ってきた意味を知った。暫く立ち止まって後ろを走る人を見ていたら、その人が道を逸れて新たな道を進み始めた。走る速度は落ちたけれど、それでも前に進む意思は強く感じられた。
ああ、きっとこれでいい。早くも遅くも感じる時間の流れを、人生という旅路にひたすらに走ってきた。そしてその道を歩く者がいて、そこから逸れる者がいて、その道をさらに強く固める者もいる。その時初めて、猛スピードで進んできた意味を知ったような気がした。
さあ、まだまだこれからだ。進めるだけ進め、猛スピードで突き進むのだ。止まった時は止まった時に考えればいい、そうやって時間は進んでいくのだから。




