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短編小説  作者: ま行
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悪道

 パシャリパシャリパシャリ。


 丁寧に現場を写真に収める。物証も顧客リストも証拠という証拠はあるだけ押さえる。


 そうしているうちに部屋の端で転がしておいた男が動き出した。


「いいお目覚めだなくそったれ。」


 男は動けぬように目一杯打ち込んでやった薬のせいで糞尿垂れ流しで寝転がっている。


「ここもお前もじきに終わる。少しだけ冥土へのお駄賃に話を聞かせてやるよ。」


 男は動くこともできず口からよだれを垂れ流した。




 お前が売ってた薬物は、ある目的のために作られた特注品でな、用途は効率的に末期中毒者を生み出して悪いことに使う手駒にする為だ。


 こいつは効きが悪いやつにはとことん効かないが、一度効いちまうと強い依存症状を短期間で発症する。効かないやつには売れない、効くやつには売れる、簡単にふるいにかけることができる。


 中毒者の判別も容易く常習者は体から鼻を突きさす甘い匂いがしてくる。甘い匂いさせて尻尾振ってくるやつはこいつの中毒者って訳だ。売る物を間違えずにすむ。


 そしてこいつは短期間で連続的に使わないと強い中毒を起こすんだ。


 こうしてあっという間に依存して、金も無くなり薬と引き換えにヤバめの仕事をやらされる羽目になる。トカゲの尻尾より質の悪いもんだ、悪魔に魂を売るってやつだな。


 そうそう、こいつの中毒者の一番厄介な問題は大本にたどり着けないってとこでな、中毒になれば酷い倦怠感や抑鬱状態を引き起こし一週間を待たず精神が壊れる動けない喋れないってな具合さ、細い糸が必ずプッツンしちまうんだから追える訳ないよな。


 でな、ここ最近やっとお前の事を見つけたよ、開発から運用に関わっていた最後の人間、秘密保持で他のやつは皆殺されちまったからな、丁寧に隠されてたお前にたどり着くには苦労したよ、この薬と証拠品全部抱えて捜査機関に飛び込む役目は俺に任せてくれよ、お前の身分は俺が全部引き継いでやる。


 安心しろよ、開発者はお前って事にしてやるからさ、真っ先に殺されたはずの俺の役目はお前のもんだ。無意味で無価値に死んでいった他のやつと比べれば名誉だろ。


 じゃあそろそろここに警察が来るから、俺はもう行くよ。死んだはずの種明かしができなくてごめんな、時間切れでさ。じゃあな。


 警察が甘ったるい匂いが立ち込めたあの部屋へ突入するのを見届けると、俺はふらふらと歩き始めた。


 何をしようか考えているとぐうと腹が鳴り空腹であることに気付く、取りあえずこれからの道はお腹を満たしてから考えよう、ふらりふらりと飲食店へ足を向けることにした。


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