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短編小説  作者: ま行
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夕焼けの箱庭

 赤く赤く染まる夕焼けが教室の窓から見えた。その色がとても綺麗で感動は例えようもない、心に刺さる情景を言葉に表す事のできない浅学な身を恥じると同時に、簡単に言葉にするのも野暮なことだとも思う。


 その昔小学生の身で見た夕焼けを、教師として教室から見上げるとは思いもしなかっただろう、夕陽を眺めて何かを思うこともなかった。


 赤く照らされた教室を眺めると、子供の頃はあれほど広く見えた場所も、大人の身なれば小さな小さなおもちゃの箱庭のように感じる。しかし一日のほとんどをここで過ごす子供達にしてみれば、ここは確かに小さくて大きな社会なのだ。


 小学生の頃教室が大嫌いだった。いじめられていたし、級友の誰とも積極的なコミュニケーションは取らなかった。今にして思えば馴染む努力はもう少し余地がある、後の祭りでも「こうしたかった」と思ってしまうものだ。


 そんな気持ちから教師になり、誰も取りこぼすことのない教室を作ろうと考えるようになった。理想の教室を作るための努力は苦にならなかった。


 しかし現状は程遠い、子供達はこちらが思うより大人びている所もあり、それでいて繊細で傷付きやすい、言葉もボディーランゲージも常に気を使って学び続けなければならない、自分の理想は社会のベストではない事を肝に銘ずる。


 いつか赤く染まるがらんどうな教室よりも、子供達がぎゅうぎゅうに身を寄せ合う雑多な教室を美しいと思えるようにと兜の緒を締め直し教室を後にした。

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