楽園
長年の研究の末私はついに楽園を作り出すことに成功した。
といっても万人にとっての楽園ではない、あくまでも私のための楽園である、だけど私にとっては間違いなく楽園だ。
こうして仰々しく前置きしてもそんな大それた物ではない、立方体のコンテナハウスに床も壁も天井も真っ白に塗りつぶし、そこへ小さなメトロノーム持ち込んで刻む音をじっと聞き続ける、ただこれだけだ。
ただただコツコツ音を鳴らすメトロノームを見つめながら無為に流れる時間を、狭く圧迫感のある色のない部屋で体を縮めてひたすらに過ごす。
膝を抱え座り虚空を見つめる、大の字に寝転がり白いだけの天井に目を動かして落書きをしてみる、メトロノームのリズムにあわせて体を左右に振ってみる、ここで流れる時間はすべてが無駄で退屈で無意味だ、笑いが止まらない。
どれ程に時間が経ったかは分からないが、コンテナハウスの扉がどんどんと叩かれてドアが開いた。
「おい、あらかた終わったぞ、今回も大量だ」
「そうか、どれくらい捕れたか見せてくれ」
倉庫には高級な魚介類がぎっちりと詰まっている、もはや私には金銀財宝にしか見えない。
「それにしても不思議なもんだよな」
「ああ、私にも正しいことは何一つ分からない、だけど私が狭い空間に閉じ込められてリズムを刻まれながら閉じ籠ると、特殊な体臭が発せられてその成分にこれだけの魚が寄ってくるんだ、ただ待ってるだけでがっぽり稼げるなんてここは私の楽園だよ」
二人はほくほく顔で陸に戻る、こんな罠の張り方は他の誰にもできないだろう、まさしく私だけの楽園なのだ。




