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短編小説  作者: ま行


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ラッキーアイテム

 信心深くもない、オカルトを信じる質でもないし、何処の誰が決めたか分からない運勢の指針に信頼を置くにはお互いを知らなすぎる。


 しかしどうだ、喫茶店で何気なく手に取った雑誌の星座占いコーナーには、私の星座についておよそ良いことが書かれていない、他の星座には良いことも悪いこともそれなりに書かれているのに、私の星座だけぼろくそに書かれていて最後に少しだけ気休めのフォローが記されているだけだ。


 勿論信じる気はない、そもそも私は占いは良いことだけしか信じないし、悪いことが書かれている所は読みもしない、だけどこれだけ悪いことを挙げ連ねれると、何だか書かれているどれかは当たってしまう気がしてきた。


 深いため息をついてページを捲ると、次ページにはラッキーアイテムの特集が組まれていた。


 赤い小物にボールペン、トートバックにキーホルダーと様々なラッキーアイテムの数々に、それに対応した商品紹介がされている、中々に購買意欲をそそられる特集だ。


 私の星座のラッキーアイテムは何かと目で探すと、カレンダーと書かれていた。


 何とも反応に困ってしまうアイテムだ、カレンダーをどうすればいいと言うのだ、そもそもカレンダーは範囲が広すぎる、手帳はカレンダーの範疇か分からないし、スマートフォンにもカレンダーアプリを入れてあるがそれだけに使うわけではない、壁掛けのカレンダーはそれこそ持ち運ぶような物じゃない、元も子もない話だがカレンダーが何の役に立つのかも想像がつかない。


 まあこんなものだろう、私は雑誌を閉じてラックに戻すと会計を済ませて喫茶店を出た。


 今日は休日、欲しかった文庫本の新刊を手に入れた帰り道だ、行きつけの喫茶店でゆっくりした後、もう少しどこか足を伸ばそうかと思っていたが、占いに書かれた「外出先不吉」の文字が気になるので素直に家へ帰ることにした。


「ただいまー」


 玄関で声を上げると、奥から母が怪訝な顔をして出迎えた。


「どうしたの?変な顔して」

「あんたどこ行ってたの?」


 母の質問に買い物だと答え、本屋の袋を指差す。


「あらそう、まああんたが間に合うっていうならそれでいいけど」


 なんの事だか分からない私は「どういうこと?」と母に聞く。


「この前急にバイトが入ったってカレンダーに書き込んでいたでしょう?スマホは修理に出してたし、うちの固定電話にかかってきて、手帳はバックの中だったから応急的にカレンダーにメモしてたじゃない」


 話が進むにつれ私の顔は青ざめていく、大慌てで靴を脱ぎリビングへ飛び込みカレンダーを確認するとシフトの時間まで十分も無かった。


 私はすぐに店長に連絡を取った。


「店長お疲れ様です浜です、申し訳ありません少しシフトに遅れるかもしれません」

「ああ浜さん、それはいいけど遅刻なんて珍しいね、これが初めてじゃないかい?」

「ええ、だけどこれでもラッキーアイテムのお陰で致命傷は避けられたと言いますか、とにかく急いで向かいますので」


 電話を切って大忙しで支度を進める、どたばたとしているうちに今度からもうちょっと占いを信じてみようかなと、カレンダーを見つめて思うのだった。

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