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短編小説  作者: ま行


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変人

「そもさん」

「え?あ、せっぱ」

「変人とはなんぞや」


 俺の友人はいつも突拍子がない、急に問いかけてみたり雑学を得意気に語り始める。


「変人とは、我が友の事である」


 この問いかけも恐らく思い付いたまま発言しているのだろう、まあ俺も答えるのはやぶさかではない。


「ほう、その友のどこが変なのだ?」

「急な問いかけ、脈絡のない雑学披露に、突飛な行動、どれをとっても変わっている」


 友人は嬉しそうにうんうんと頷いている。


「さもありなん、しかしそれのどこがどう変なのだ?」


 思いがけない問いかけに少し言葉につまる、確かにどこがどうと聞かれてしまうと、こちらもどう答えてよいのやら。


「まあしいて上げるなら唐突さだろうか」

「ほう?」

「円滑なコミュニケーションには、大なり小なり起こりや探りなど、結論を分かりやすくする努力がある」

「ほうほう?」

「その友にはそれがない、唐突に始まり唐突に終わる、会話が自己完結に過ぎれば伝わっているか不安に思うのが常ではないか?」

「ようがす、しかしその友は伝わる人を選んでいるのではないか?」


 むうと閉口する、確かに友人は態度こそ万人に同じ調子だが、こうしたコミュニケーションは俺や限られた人にしかとらない。


「では急に始まる雑談講釈はどうだ?」

「ふむ?」

「どこから聞き付けるのか、何を見ても解説や注釈をつけられる知識量は大したものだが、常に博物館ツアーガイド付きの気分は中々変わっていると思うが?」

「認めよう、だが聞き手がいなければ自慢の知識も日の目を見ることはないな」


 さすがの友人も誰もいないところで誰にも聞かれず誰にでもなく講釈垂れることはないか、言われてみるとそれはそうだ。


「こうして考えてみると我が友はそう変人ではないのかも知れないな」

「いやいやその友人は立派に変人だとも」


 は?と思い理由を訪ねる、俺が言っていた変人はもちろん今会話している友人のことだ。


「ああ、君の言っていた変人が私であることは分かっているぞ」


 そりゃそうだと肩をすくめる、変人であるとともに才人でもある友人に、俺みたいな凡人の行間を読むこと等容易い。


「私も一人の変人を知っている、それは私の無二の友だ」


 友人はぴっと伸ばした指で俺を差し笑った。


「理由をお聞かせ願おうか?」


 俺が理由を聞くと、友人は得意気な顔で指を空に向けて話始める。


「彼の友人は自分がいかに変人か理解しているのさ、だけど生き方や性格はそう簡単には変えられない、そうだろう?」

「ああ、そうだな」


 どんな過程を経たにしろ、その人を象るアイデンティティーは本人でさえ手が出せない強固なものだ。


「その友人は破天荒な性格から中々人の輪に馴染めなかった、それでいいと思っていたし、馴染む気もなかった」


 友人は嬉しそうに笑いながら指をくるくると回した。


「しかしある時、その友人の突然の変人的行動にそれは見事な合いの手を入れて魅せたのさ、返ってくるとは思わなかった暴投を背面キャッチしてストレート返球!痺れるファインプレーだったね」

「なるほど、盛り上がっているところ悪いが、変人と主張する理由は如何かな?」


 パチパチと手を叩いて喜ぶ友人を本題に戻す、一つ咳払いをして続ける。


「つまりだね、その変わり者の友人のペースを掴むことの出来る彼も中々に変わり者なのさ」

「ま、否定はできないな」


 確かにそうだと思うし、悪い気はしない、これでいいしこれがいい。


「そも、変とは他の誰かが居なければ決められない、そして他の誰かも変かどうかを決めてもらわなければならない、同じ人間が二人といない我々人間は、変人であることから逃げることは出来ないのさ」


 友人はくるりとその場で楽しそうに回った、しなやかで軽やかなターンは風を纏うようだ。


「だから私の無二の人、これからも変わり者で変わる者の私と一緒にいてくれるかい?」


 俺は友人の手を取って言った。


「勿論、俺は変人で君の友人だからな」


 笑顔ではしゃぎ合う二人は変人ではあるが肝心なことは忘れない、二人にある絆が確かなものである事だけは。

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