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短編小説  作者: ま行
33/140

エージェント

「知ってる丸山さん、うちの向かいの旦那さん痛風で入院ですって」

「あらー、入院なんてそんな事あるのね」

「何か色々と検査するそうよ、急な事だから大変よね」

「本当ねお気の毒に、うちの旦那にも気を付けるよう言わなくちゃ」


 女が二人で集まり赤裸々らな会話を繰り広げる、所謂井戸端会議はプライバシー等あまり気にすることなく容赦ない情報交換が行われる。


「高田さん、丸山さん、こんにちは」

「あら宮川さんこんにちは」


 会話の輪にもう一人加わる。


「ねぇ、最近この辺でブンブン鳴らして走ってるバイク軍団に、山田さんの息子さんが混ざってるらしいわよ」

「それ本当?最近五月蝿くて参ってるのよね、夜中に集まって怖いのよ」

「私息子から聞いたけど、河田さんの娘さんと付き合ってるから近くまで来るそうよ」


 三人の「嫌ね」という発言は重なる。


「うちの娘に付き合いに注意しろって言わないと」

「高田さんの絵里ちゃんは大丈夫よ、挨拶もしっかりするし明るくていい子だわ」

「思春期だから私には生意気で困っちゃうけどね」

「私のとこの息子もそうよ、本当に気むずかしくて困るわ」


 三人が喧々囂々と話し合っていると、一人また一人と輪は広がり最終的に七人になった。


 話し合う内容は近所の噂から、誰それの近況、何処の誰が誰と会ったかと、聞く人が聞けばひっくり返ってしまいそうな内容を互いに共有していく、こうして築き上げたご近所ネットワークは隣近所限定とはいえ無類の情報量と伝達速度を誇る。


 井戸端会議はある程度時間が経つと、蜘蛛の子を散らすように解散し、皆それぞれの家へと帰っていく、終わってしまえば一気にボリュームは下がり閑静な場所へと様変わりした。




 エージェントNo.57423 コードM.M


 認証番号 ******


 報告 対象の経過観察を実行中、会話内容の録音データを暗号処理して送信済み、確認したら端末ごと破壊して破棄せよ。


 情報収集は順調に行われている、データのアップロードは定刻に行う。


 潜入任務の問題点の洗いだしは後日書面にて送る。


 情報網形成は問題なく遂行中、質と量ともに良好、性急な拡大を控え現状維持を推奨。


 任務を続行する、報告終了。




「母さんどうしたの?」

「少し調べごとしてたの、お腹すいてるでしょご飯にしましょう」


 エージェントは潜む、姿も身分も何もかも覚られず日々の生活と任務に邁進するのであった。

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