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短編小説  作者: ま行


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断髪式

 しゃきしゃきとハサミが動く軽快な音、しゃかしゃかと忙しない洗髪台、髪の毛を揺らすドライヤーの風に、お客様との楽しい会話、ここは私の美容院、完璧な私のお城。


「いらっしゃいませ!」


 ドアベルが鳴り従業員達の声が響く、手の空いていた私が来客に対応する。


「予約とかしてないんですけど入れますか?」


 若くて綺麗な女の子で、さらさらした美しい黒のロングヘアーが目を引く、見たところ丹念なケアをしている。


「大丈夫ですよ、私が担当してよろしければすぐにできますが」

「ああよかったお願いします」


 こちらへどうぞと言って席へ案内する、ちょうど時間も手も空いているタイミングでよかった。


「どのようにしますか?」


 一通りの準備をしながら声をかける。


「はいうなじから下を全部切ってください」

「え!?」

「え?」


 大きな声で聞き返してしまった、お客様はきょとんとしている。


「何かマズイですか?」

「いえ、マズイ事はないですけどよろしいんですか?」

「え?何がですか?」


 私は思わず面を食らった。


「こんなに長くて綺麗な黒髪ですから、お手入れも丁寧にされていますし、そんなに大胆に変えてよろしいんですか?」

「ああ、いいんです切っちゃってください」


 お客様は私の心配をよそにあっけらんかと言った。


「では切らせていただきますね」


 本当に大丈夫なのかと内心ビクビクしながら作業に入る、こうして突然髪型を大幅に変える人は居ないわけではないが、これほど思いきる時には大抵私生活で何か大きな変化があった人が多い、始めてから何気ない会話で間を繋いではいるが、気になって気になって仕方がなかった。


 しかし踏み込みすぎてお客様に不快な思いをさせてしまうのは、美容師としても私の城の主としてもしたくはない、気になる気持ちを集中力に押し込めて必死にかき消した。


 最終的に彼女の髪型はベリーショートヘアに落ち着いた、髪型はよく似合っているが反応はどうだろうか。


「すごいすごい!理想通りの髪型です!」


 上々な反応でよかった、しかし一段落つくとますます髪を切り落とした理由が気になり始めた。


「あの、差し出がましいのは承知でお聞きしたいのですが、何故ここまでバッサリと髪を切ろうと思ったんですか?」


 お客様はニコニコと髪型を鏡で確認していた手を止めて、満面の笑みで言った。


「ラーメン食べるときに邪魔だったんですよね」

「理由薄っ!!」


 あまりに薄すぎる断髪理由に、私の叫び声が私の城に響いて遠く消えていった。

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