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短編小説  作者: ま行
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拾い物

「あの、何か落としましたよ」


 前を歩いていた人のポケットから何か落ちたので声をかけた、しかし聞こえていないのかどんどんと歩いていってしまう。


「ねえちょっと!」


 もう一度大声で呼び掛けても行ってしまった、もしかしたら音楽でも聞いていたのかも知れない、仕方がないので拾って渡してあげようと思ったら、すでにどこかへ消えてしまった。


「やけに足早だったな」


 拾い上げた物は折り畳まれた一枚の紙だった。


 開いてみると書かれた文字は「大当たり」とだけ記されている、変わったところは何もない、ただコピー用紙に印刷がなされているだけだ。


 正直戸惑ってしまう、だけどさっきの人にとって何か大切な物だったらいけないと思って交番に向かった。


 警察官の人も自分も多分に困惑して手続きを済ませる、まあ何の役にも立たなかったとしても、少しの善行が出来たと思えば気もちょっとはよくなる。


 小さな親切の対価としてはこんなものだろう、見返りがないことの方が当たり前なのだ、そう思って帰路につくとハンドベルががらがら鳴る音が聞こえてきた。

 どうやら福引きをやっているらしい、そういえばさっきの買い物で一枚福引券を貰った事を思い出した。


 いつもだったら素通りするが、何となく目についたし、券も貰ったのだからやってみるかと思って列に並ぶ事にした。


 順番がきて券を渡す、一等は温泉宿への旅行券だが、高望みはすまい米でも当たれば食費が浮くなと願いながらハンドルを回す。


「一等でた!一等賞~!」


 おじさんがハンドベルを勢いよく振り回し、周りの人間が拍手で沸く、呆気にとられていると結果は一等、囃し立てられいるうちに自分が一等を引いた事に驚きと喜びが押し寄せてきた。


「兄ちゃんおめでとう!彼女さんと行っておいでよ!」


 余計なこと言って水差しやがってとは思ったが、喜びでそんな気持ちも吹き飛んだ、その日に会社に連絡を入れて、消化してない有給を取った。




 仕事の都合上三ヶ月先になってしまったが、温泉宿をたっぷり堪能した翌日、あの落とし物はどうなったのか問い合わせみるとまだ落とし主は見つかっていないという。


 落とし物は三ヶ月経つと受けとることもできるらしい、しかしあの紙を貰ってもどうしようもないので権利は放棄する事にした。


 一連の出来事に区切りがついて思うと、小さな親切が大きな幸福に繋がった、情けは人のためならずを体感することが出来たのは大きな拾い物だったかも知れない。

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