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短編小説  作者: ま行
21/140

プロデューサー

「あなた起きてください」


 私はいつもより長めに眠っている旦那を優しく起こす、今日は休日、少し位寝過ごしたっていい。


「朝ごはんできてますよ、子供たちはもう食べちゃいました」


 台所に戻り、ご飯をよそい味噌汁を注ぐ、好物の甘い卵焼きと梅干しを用意して机に並べる。


 顔を洗った旦那が食卓につく、私はやかんに火をかけ食後のコーヒーの準備をする、食べ終える丁度に入れたてのコーヒーのマグカップを出して、食器を下げて洗い物を片付ける。


 家族のご飯が済み洗濯物を干しはじめる、今日はよく晴れているので乾いたときには部屋に良い匂いがするだろう。


 子供たちは部屋でゲームをして遊んでいる、外に出て体を動かすのも健康的でいいが、ゲームで遊ぶ時間も大切だと思う、もちろん節度を守らせる事は忘れない。


 そうこうしているうちに、掃除やゴミをまとめる等の朝のルーチンはすべてこなし一息つけるようになる、もう一度お湯を沸かして今度は私が好きな紅茶を入れる、優しい香りが鼻腔をくすぐり気持ちを落ち着かせる、後で子供たちにお菓子と飲み物を持っていってあげよう、もちろん宿題の催促も忘れずにやらないと。


 子供たちの部屋に顔を出した後、私は部屋を回り足りないものや不備がないか見た、買い忘れが無いように確認を怠らないのが住み心地の良い家を作る秘訣だ。


 趣味で始めた家庭菜園の世話をして、読みかけていた本の続きを読んでいたら、そろそろ昼食の用意をする時間になった、調理が簡単にすんで手早くメニューが考え付く麺類は主婦の味方だ。


 午後になり準備をしてから買い物に出かける、買うものをメモ書きし一人で出かける、旦那は疲れている様だからそっとしておく事にした、車を出せば重いものもそれほど苦ではない。


 店を回って買い物をして、帰って買ったものを整理し、洗濯物を取り込み畳んだりシワを伸ばしていたら、今度は夕食の用意をする時間になる。


 一品だけ買ってきたちょっと豪華なおかずにして、残りは冷蔵庫の中を見て何を何品作るかパッと決める、見なくても大体こうしようと考えているのであまり迷うことはない、私の料理の手つきも随分上達したと思う、一汁三菜を食卓に並べて家族皆で食事をとる、子供たちは私の苦労も知らずあっという間に食べ終えてしまうが、それもまたいとおしく感じるのだ。


 お風呂掃除をして順番に湯を使わせる、私はいつも最後に入るから湯は冷め気味だが、お風呂に浸かれば一日の疲れも溶けてなくなってしまう、お風呂の魔力とはなんと頼もしいことか。


 明日のご飯の仕込みや諸々の準備を済ませて漏れがないか確認すると、寝る支度をして寝室へ行く、今日一日を振り返りながら床につくとぐっすりと眠ることができる、完璧な一日に感謝し幸福な明日を願って私は眠りについた。




「しかしすごい事件でしたね」

「ああ、常軌を逸するとはこの事だな」


 犯行現場は本当に綺麗に整えられて、文句がつけられない完璧具合だった。


 どこもかしこも不気味なほどよくできていて、演出の様にも感じてとれる。


「犯人の女性は、成人男性一人と女子一人男子一人を誘拐し、家に監禁して家族を演じることを強要した」

「ええ、従える為に拷問や洗脳を行って操っていたようです」

「今から取り調べが恐ろしいな、あの女完璧な家族をプロデュースして何がしたかったんだか」

「とんでもない女ですよ、捕まったとき何て言ったと思います?」

「何だ?」

「次はもっと上手くやれるって小さく呟いたそうです」


 背筋が凍るように寒くなる、今はただただ二度と事件が起きないことを願うばかりだ。

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