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短編小説  作者: ま行
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安易な提案

 つい最近私は死んだ、残した妻にも迷惑をかけずぽっくり死んだため悔いはない、いつか誰にでも訪れることだ。


 そんな些細な事はいい、問題は天国が思ったような場所ではなかった事だ。


 苦はなく快適で日々を過ごすことになにも問題はない、ないのだが、ないとなると刺激が足りなくなるのは性なのだろうか。


 現世の出来事を覗いてみるが、生きているときあれほど忙しく日々に追われていたというのに、隠世から見れば何とも動きがなく見える、都度違いはあれど皆大体同じことの繰り返しの生活で大きな変化は殆どない、天国で出会った仲間内で縁故の生活を見守っていたが、そうそうに飽きがきて野球中継を見るようになった。


 そうして過ごしているうちに、隠世の我々も似たような繰り返しに動くだけだと気付く、結局退屈なのは自分達だと思い至るも中々に自分を変えることは難しくてならない、死して尚人はあまり変われないのだ。


 そうこうしていると、仲間内の一人がとんでもない遊びを思い付いた。


「この広大な何処までも広がる世界で、かくれんぼをしようじゃないか」


 この考えに皆賛同した、童心に返り遊ぶことは魅力的に思えた、その後に起こる事はまったく考えもつかなかった。


 初めのうちは皆楽しんでいた、思い付くままの場所にかくれる事ができるので驚きと発見の連続だった、隠れている人を見つけるシンプルな遊びがこれほどまでエキサイティングだとは皆が思っていなかった。


 この単純にできる事が致命的だった。


 誰かが言った。


「あんまり隠れるの上手じゃないな」


 誰が誰に言ったかは関係がなかった、全員がその事を思っていて全員がその事にカチンときた。


「ならもっと制限を広くしよう」


 提案に皆賛成した、自分ならもっとできるのだと信じて疑わなかったのだ。


 だがあの世じゃ病気もなければ怪我もしない、安全だということが歯止めを効かなくさせてしまった。


 あっという間に捜索範囲は広大になり、時間も日を跨ぐことが当たり前で、疲労がないから誰も終わろうといいださなかった。


「もう一回だ」


 この提案に異議を唱える者はいない、皆が飽き始めた時には誰が何処にいるか分からなくなってしまった。


 鬼は集まって捜索隊を組んだ、知恵を出しあって思い付く限りの場所を探して回った。


 鬼に見つかった者も捜索隊に加わり懸命に探したが、とうとう見つからない者を残して一年がたってしまった。


 私は今仲間と木々生い茂り猛獣が跋扈するジャングルの奥地にいる、あの時の安易な提案の前に戻れるのなら私はどんなことだってするだろう。

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