表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
短編小説  作者: ま行


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

132/150

誰かの遠吠え

 遠吠えが聞こえてきた。真夜中、月が明るい夜だった。綺麗な月だなと、何となく眺めていた時の出来事だった。


 最初は近所の犬が吠えてるものだと思った。しかしどうにもそうじゃあないんだと分かった。どうしてか、そうじゃないと分かった。


 不思議な感覚だった。でもこの遠吠えは犬とは違う、いや遠吠えをするのは犬なのだが、確かに違うんだと分かるんだ。


 寂しい声だと思った。この遠吠えは、どうしてかとても寂しそうだった。誰かを呼んでいるような気もするし、遠ざけているようにも聞こえる。矛盾しているのは分かっているけれど、確かにそう感じるんだ。


「君は誰だい?」


 窓の外に向かってそう呟いてみた。馬鹿馬鹿しいとは思ったけど、応えてくれる気がした。すると本当に、もう一度遠吠えが聞こえてきた。


「驚いた。声が聞こえるのか」


 もう一度、遠吠えが。


「どうした?寂しそうな声に聞こえるけど」


 更に一鳴き、聞こえてくる。そうだと言っているように聞こえた。こうしてみると、会話のようだ。遠吠えで会話なんて、変なものだ。


「どうして寂しい?」


 理由なんてない、どうしてか寂しくなるんだ。


「そっか、でも皆案外、そんなものだよ」


 そうか、皆そうなのか。


「ああ、どうしようもなく、叫びたい日があるんだよ」


 そうだな、そうかもしれない。


「でもさ、こう考えてみろよ。どうしようもなくて叫び声を上げた時、案外それを聞いているやつがいるんだぜ。思っているより、一人じゃあないんだと思わないか?」


 ああそうだな。もしかしたら、それを分かっていて、誰かを呼んだのかもしれないな。誰でもいいから聞いてほしいって、お前を呼んだのかもしれない。


「ああ、きっとそうさ。そして届いた。こうして、誰かと過ごす夜をくれたんだから、ありがたいものさ」


 その会話を最後に、遠吠えは聞こえなくなった。月明りが差し込む部屋で、誰かに向かって、遠吠えを真似てみた。すると小さな声が、返ってきた。思わず微笑んでもう一度遠吠えを真似てみる、一人寂しい時ばかりじゃない、そう思いを込めて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ