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短編小説  作者: ま行


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ポスト

 実家で自室の整理をしていると、小学生の頃、自由研究の工作で作ったポストが出てきた。当時家にあったお菓子の箱や、色紙を切り貼りして形を作り、折り紙や、シールなどで飾り付けた自信作。


 とてもお気に入りだった思い出はある。あまり出来がよくなかった私が、先生に珍しくすごく褒められたものだった。


「懐かしいなあ、まだ残ってたんだ」


 しかしお気に入りだったとはいえ、小学生のころの工作が残っているとは思わなかった。お母さんは整理整頓好きだし、こういう、使わなくなった古いものは、どんどん捨ててしまうはずなのに。


「お母さーん、これ、まだ取っておいたの?」

「あら懐かしい。っていうか、まだじゃないわよ」

「へ?」

「あんたが絶対に捨てるなって散々言ってきたから、私も捨てるに捨てられなくってね。それきりすっかり忘れてたわ」


 お母さんが言うには、とても大切なものを入れてあるからと、当時の私が散々怒って言いつけたらしい。一体何が入っているんだろうと、本当に久しぶりに、ポストの取り出し口を開けた。


「うわっ!これって…」


 中に入っていたものを手にした時、恥ずかしさに思わず顔を真っ赤にしてしまった。それは、当時好きだった男の子に宛てに書いたラブレター、しかし、勇気を出すことができずに渡せなかったものだ。


「あー…、大切なものってこういうことか」


 渡せなかったけれど大切な手紙。多分、宝物だったポストに入れたんだ。本当に恥ずかしい、だけど、本当に懐かしい。


「格好良かったなあ、彼。結局、まったく縁なんてなかったけど」


 好きだった男の子は、当時の女子たちの人気を集めていた子。運動神経が良くて、背も高くて、ちょっと大人びていた。誰もが夢中になっていたから、当然告白もされ放題。


 私なんかが出る幕もなくって、渡せなかった。だけど、どうしても届けたくて、ささやかな強がりで、自作のポストに入れたのだろう、誰にも届くはずのない、思い出を。


 過去の私、この手紙、届かなくてよかったよ。現在の私は、この宛名の人じゃないけれど、素敵で、優しい、大切な人と一緒になります。勇気を出せば、私にもこれくらいできるんだからね。


 人生の節目に、笑いと勇気をくれたポスト。過去の私が届けたかったのは、もしかしたら、この手紙ではなくて、思い出だったのかもしれない。


「なーんて、そんな器用な人間じゃないか、私は!」


 このポストは、自分の手で解体することにしよう。楽しくて、美しかった思い出だけど、いつまでも形にしておくのも気恥ずかしい。今度は心のポストにしまっておこう。きっといつの日か、届く日がくるかもしれないから。

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