宇宙人からのアルバイト
アブダクションという現象がある。宇宙人がUFOに乗って人を誘拐してしまうというものだ。まあ俺も、オカルトでそういうものがあるというのは、たまたま知識として知っていた。
しかしまさか、自分がそんなことに遭遇するなんて、誰が想像できるだろうか、俺は今、UFOに乗って宇宙にいる、宇宙人と一緒にいる。マジで馬鹿げてるけど、本当だからどうしようもない。
俺の目の前にはずらりと宇宙人が並んで立っていた。見た目は正直、想像通りというか、創作通りというか、意外性がなさすぎる。
「あっ、この姿はですね、地球人の方に驚かれないよう、イメージに合わせて変えているので、本当の姿ではないんですよ」
「えっ!?どうして…」
「あっ、失礼しました。テレパシーってやつです。へへっ」
「へへっ、じゃあないですよ。勝手に考えを読まないでください」
「あっ、これも失礼ですよね。へへへっ」
何ともへらへらしている宇宙人だ。だが、取り合えず話は通じそうだ、俺は思い切って聞いてみた。
「どうして俺はさらわれたんですか?人体実験とかは嫌なんですけど」
「ええっ!?そんなことしませんよ!物騒なこと言わないでくださいよ!」
「じゃあ他の理由が?」
「アルバイト、しませんか?」
アルバイトと思わず俺は聞き返した。宇宙人が地球人にどんな仕事を頼むというのか、俺も少し興味がわいた。
「仕事の内容は?まさか人を誘拐するのを手伝えとか言うんじゃないでしょうね」
「さっきからあなた物騒ですね」
「突然人をさらうあなたたちに言われたくないな」
「それは言えてますね。でもまあ聞いてくださいよ、仕事の内容はとても簡単です。いいですか?それは…」
宇宙人が俺に頼んだ仕事内容を聞いて、呆れかえってしまった。しかし仕事の内容に対して報酬が美味すぎる。俺は一も二もなく、そのアルバイトを引き受けることに決めた。
「宇宙人なんているわけない、馬鹿馬鹿しい…っと」
俺はSNSにそう投稿した。そして別のアカウントに切り替えると、今度はこう投稿した。
「宇宙人とUFOは確かに存在する。いないという奴はデマをまき散らしている…っと」
宇宙人のアルバイトの内容は、俺のできる範囲で、宇宙人存在説と宇宙人非存在説を流布するというものだった。
彼ら曰く、ちょくちょくヘマをして自分たちの存在をばらしてしまうので、それをあやふやにしてほしいというものだった。
地球人との交流は魅力的だが、文明レベルの水準があまりに違いすぎて、まだまだ接触するには危険があると言う。だから、自分たちの存在をあやふやに広めてもらいたいとのことだった。
方法はともかく、確かに彼らの水準に我々人類は追いついていないと思う。ただ同時に、あれだけのんびりでうっかりものの彼らを、簡単に人間と接触させるのはどうかと思った。
願わくば安心安全に彼らと再会できる日がくることを、俺はそんなことを考えながらアルバイトに勤しむのであった。




