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短編小説  作者: ま行


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自分から届いた手紙

 ポストに投函されたものを取ってくる。親に届いたものばかりだし、ろくでもないダイレクトメールや、勝手に投函されるポスティングのチラシだ。


 しかしその中に、やけに綺麗な封筒が混じっていた。何だか他のものと比べると浮いて見えるなと、より分けてみて驚いた。


「あれっ!?俺の名前!?」


 その封筒には俺の名前が書かれていた。俺から俺に宛てて書かれた手紙だ。こんなものを出した覚えはない、一体なんだこれは、首を傾げながら家の中に戻った。


 家族の誰に聞いても、こんな手紙を出した覚えはないという。そして書かれた字は誰がどう見ても俺の字だ。俺から見ても俺の字だと分かるのだから大したものだと思った。


 気味悪いけれど、届いたからには気になるし開けない訳にもいかない。俺は封筒を開けて中の便箋を取り出した。やっぱりそこに書かれているのは俺の字で、俺が書いたんだと改めて思わされる。


 手紙の内容はこうだった。




 この手紙を読むお前は、多分ものすごく動揺しているだろうな。そりゃそうだ、今書いている俺が信じられないのだから、俺であるお前が信じられないのも無理はない。


 実はこの手紙を書いている俺は、明日のお前なんだ。未来からの手紙って言えばいいのかな、実は俺にも仕組みがよく分かってないんだ。だから詳しい説明はできない。


 お前は明日、ずっと好きだったあの子に告白しようと思っているだろう。いや隠さなくていい、俺はお前だからもう分かってるんだ。そんなに恥ずかしがることもないさ。


 忠告しておく、あの子に告白するのはやめておけ。


 お前がこれを読んで従ってくれるかどうかは賭けだ。何故やめておくべきなのか、その理由を俺は話すことができない。だからとても胡散臭いし信じられないのは無理ないと思う。


 ただもう一度忠告する、あの子に告白するのはやめろ。絶対にだ。


 どうするかは俺に任せる。ああ違った。お前にか。どうもややこしいな、とにかく俺は伝えたいことは書き切った。ルールにのっとってな。じゃあ明日のお前が、俺と同じ道を辿らないように祈ってるよ。




 読み切った感想は「なんだこれ」であった。まったく馬鹿馬鹿しい、こんなもの破り捨ててやる。そう思った。


 しかしなぜ俺が告白しようと心に決めていたことを知っているのだろうか、このことは誰にも話していない、家族にも親友にもだ。この情報を知りえるのは、俺しかいない。


 そう思うと途端に怖くなってきた。一体告白したらどんな恐ろしいことが待っているんだ。もしかしたら、俺が思いを告げようとしている相手は、何か恐ろしい秘密を抱えているのかもしれない。重大な事件に巻き込まれたのかも、そう思うと、中々無視できるものではなかった。


 告白はやめよう。それが俺の結論だった。だって未来の俺がここまで忠告しているんだ。少しくらい信じてもいいだろう。それに女の子は彼女だけじゃない、まだまだ出会いが待っているのだから、この選択も決して悪いものじゃない、そう思えた。


 俺は未来からきた手紙をそっと引き出しの中に仕舞った。




 翌日、何事もなく一日が終わったことで私は作戦の成功を確信した。今日は一日ずっと心臓が跳ねっぱなしで、嫌な汗が絶えず額を濡らしていた。


 私は一度死んだ。告白してきた男は、顔も名前も知らないやつだった。当たり前だが、私は告白を断った。その後待っていたのは、ナイフで体中を穴だらけにされる死であった。断られたことに逆上してきた男が、私のことをめった刺しにして殺したのだ。


 しかし死んだはずの私は真っ暗な空間に立っていた。そこに居たのは角やしっぽの生えた珍妙なやつ、そいつは自分を悪魔だと名乗った。


「俺はお前のことを気まぐれに助けることにした。理由は特にない。悪魔とはそういうものだ。しかし直接助けはしない、助かる方法を授けてやろう。手紙だ、手紙を書け。それはお前のことを殺す男の元に届く、告白する前日にな。お前がただ助けるだけじゃ俺が面白くない、ルールを設けよう。それを飲めるのなら、お前はもう一度生きることができるぞ」


 私は必死になって手紙を書いた。私のことを殺す相手に、必死になって手紙を書いた。悪魔の設けたルールを守って、手紙を書いた。


 手紙を書き終えると、私は殺された日の朝で目を覚ましていた。今日この日何事もなく終えることができたら、悪魔の言う通り私はもう一度生きることができるということだ。


 私は賭けに勝った。どんな内容なら相手は告白をためらうか、今まで経験したことがないほど考え抜いた。それが成功した喜びが、私が生きていることを実感させる。


 しかし同時に不安に思うこともあった。私はこうして生き延びたが、私を殺したあいつは野放しだ。もし私ではない他の誰かが身代わりになっていたとしたら。それを考えると、体の震えが止まらなかった。

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