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短編小説  作者: ま行


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突然の猫

 朝の教室はざわざわと騒がしい、年頃同じの若者が集うのだ、騒がしくしない方が難しい。それでもピタッと静けさが止むタイミングがある、それは担任の教師が入室してくる時だ。一部の跳ね返りは真面目に着席しないこともあるが、その日だけは皆が本当にぴたりと静まった。


 軽やかな足取りと、華麗な身のこなしで教卓の上にのぼったのは、どこからどう見ても猫だった。担任教師が入ってくると思っていた生徒たちは、皆一様にぽかんと口を開けている。


「にゃん」


 猫は一つ鳴き声を上げると、いつの間にか教卓の上に置いてあった出席簿を器用に開いた。そして一人一人の名前を読み上げるように、にゃん、にゃん、にゃんと鳴き声を続ける。


 生徒たちは勿論ぽかんとしたままだ、誰も返事をしない。それを不満に思ったのか教卓の猫はバシッと机を叩いた。


「シャーッ!」


 牙をむき出しにして威嚇する様は中々に迫力がある。生徒の一人が思わず「はいっ!」と返事をした。


 すると猫は満足げにこくこくと頷くと、またしてもにゃんと鳴き声を続けた。恐らく出席確認をしているのだろうと何となく察した生徒たちは、鳴き声に合わせて一人一人が順番に返事をしていった。


 いつもは不真面目に返事をする生徒も、この時ばかりは皆と足並みをそろえていた。それもそのはず、猫に反抗したところでどうしようもない。この訳の分からない状況に、ただただ混乱していた。


 まだ返事をしていない生徒もいたのだが、猫はもう満足したのか出席簿を閉じて、自慢げに鼻を鳴らした。次はどうする、そう生徒たちが身構えていると、今度は教科書を開いてにゃんと鳴き始めた。


 授業までやるのか、全員がそう悟ってうんざりとした時、またしても教室の扉が開いた。


「いやーすまんすまん、ちょっと遅れちゃったな。あれ?皆どうした?そんなぽかんと口を開けて」


 担任教師が入ってきた。そちらに目を取られて全員の視線が猫から外れた。もう一度教卓に視線を向けた時には、もう猫の姿はなかった。生徒全員がわっと教卓に集った。一体今何が起こったのか、今までのことは幻だったのか、それを確認するために集まった。


 猫はどこにもいない、しかし皆はそこに猫がいたことを確信した。


 残された出席簿と教科書に、可愛らしい肉球の跡がスタンプのように残されていた。あれだけパシパシと叩いていればそうだよな。それが生徒たち共通の認識であった。


 それにしてもあの突然現れた猫は何だったのか、そろって首を傾げる生徒たち、それを見て首を傾げる担任教師、狐につままれたという言葉があるが、今の状況はまさに猫につままれたといったところであった。

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