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短編小説  作者: ま行


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微睡みの中で

 窓際の昼の日差し、ぽかぽかと暖かだ。自然と瞼が落ちてきて、眠ってしまいそうになる。はっと目を覚ましては、ふっと眠りに落ちそうになる。そんなことの繰り返しだ。


「メロ」


 名前を呼ばれて首を上げる。大好きなママが声をかけてくれた。嬉しい、ぱたぱたとしっぽを振る。


 頭を優しく撫でられる、気持ちがいい。でも嬉しいのに気持ちがよくて眠ってしまいそうだ。もっと撫でてもらいたくて態勢を変えた。ママ、もっともっと、撫でてほしいよ。


 ママが言うには、私はもうおばあちゃんらしい。おばあちゃんって何だろう。私には分からないけれど、長生きねって褒めてくれる。だから私も長生きねってしっぽを振り返す。


 それにしても最近はよく眠くなる。窓際はお気に入りの場所、ここで横になるとすぐに眠くなっちゃう。もう少し遊びたいのに疲れてしまうことも増えた。ああ、もしかしてこれがおばあちゃんってことなのかな。でも、やっぱりよく分からない。


「窓際は暖かいね、メロ」


 そうなのよ。だから、ここがお気に入りなの、そんな意味を込めてしっぽを振った。


 ここでママに撫でてもらうのが一番好き、ここでパパが帰ってくるのを待つのが一番嬉しい。しばらく帰ってきてないけれど、遠くへ行ったお兄ちゃんも私待っているのよ。


 お兄ちゃんは小さなお友達も連れてきてくれる。ちょっと乱暴に毛を引っ張られることもあるけれど、とても可愛いお友達。私のこと可愛い可愛いって褒めてくれる。だから私も、あなたたちもねってお顔を舐めてあげる。


 微睡みの中、またあの子たちに会いたいなって思う。ママが優しく撫でる手で、瞼がどんどん重くなる。ああ、眠いなあ。暖かいなあ。いつまでもこんな時間が続けばいいのになあ。私はそんなことを思いながらスッと目を閉じた。




「本当か!?」

「うん。あのお気に入りの窓際で」


 電話の向こうでずずっと鼻をすする音が聞こえた。私はまだ少し暖かさが残るメロの体を撫で続けている。


「早く帰るから。すぐに帰るから。きっと待ってると思うから、あの場所でメロが」

「そうね。きっと待ってるわ」


 もう一度大きなずずっと音が聞こえてくる。切った後、私はメロに語り掛けた。


「あの人きっと、今も泣いて、帰ってきてもっと泣くと思うわ。でも心配しないでね。あなたとちゃんとお別れしたいから泣くのよ。悲しいからじゃないの。バイバイって伝えたいから泣くの。だからいつものように迎えてあげてね」


 もう動かなくなったメロを撫でて、私もずっと鼻をすすった。暖かいわね、そう言ってまた体を撫でた。もうしっぽは動かなかった。私の鼻をすする音だけが部屋に響いていた。

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