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短編小説  作者: ま行
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食糧難

 辛い時間が続く、飢えにあえぐこの体に限界が近いことを感じる、目の前にろうそくの幻覚が見えて火に溶ける蝋が死を想起させる。


 俺には伝えなければならない事実がある、しかしもうその力はない、薄い望みだが俺の死が真相の手がかりになることを願う。




 研究施設からある一人の博士が遺体で発見された。


 清掃業者からの通報で現場にたどり着くと、妙にしわしわな遺体があった。


 長いこと刑事の仕事をしてきたが、こんな変な死に方は見たことがない、周りの状況がなんとも普通過ぎることも逆に不気味だ。


 様は事件性が全くない状況で干からびたようなシワっぽい遺体が転がっていることになる。


 検死が終わればハッキリするが、なんとなく餓死のように感じるが、聞き込みの様子だと昨日に姿を確認している人もいるし、会話をして元気な姿だったとすべての関係者が証言した。


 裏取りも問題ないので、彼は夕方研究室に戻ったあと変死した事になる。


 彼は代替食品の研究者で、今では誰もが口にしている食品を研究していた。それは安全な代替食品で、今や全世界中の人々の主食品となった。


 陰謀めいた殺人も考えたが、彼は大して著名な研究者でもない、研究所だって他にいくらでもある。彼だけが狙われることは考えにくい。


 取り合えずと思い、彼のデスクを調べていたらパソコンがスリープ状態であることに気がつく、試しに立ち上げてみるとロックがかかっておらず画面を見ることができた。


 直前まで作業していたのか、研究データが画面に数多く残っていた。見ただけで頭が痛くなるし理解もできない、数値やグラフとにらめっこする仕事は自分にはとてもできそうにないと思う。


 ふとただのテキストファイルが残っているのが目に入った。研究データでも数字でもなくただメモ帳が残されている、直感だがやけに不気味に感じて見てみることにした。


 読み終えると同時に大声を張り上げ人を呼ぶ、誰でもいいから一人でも多くにこの事実を伝えなければならない、大勢が死ぬ手遅れになる前に。




[この事実は多くの人に絶望しか与えないだろう、世の中の大混乱も避けられない、しかし伝えなければならないだろう。


 様々な環境問題や社会問題を解決するために産み出された代替食品は、叡知をかき集めつくられた。


 遺伝子を組み換え改良を重ね、世界中が協力しあって完成したそれは、気づくことのできなかった重大な欠陥があった。


 今まで何も問題のなかった成分が、繰り返された遺伝子操作によって未知の性質を持った。人間の体に吸収され蓄積を続けると、許容量を越えたときに変異して、人間の栄養を吸い付くし死に至らしめる。


 食糧問題を解決するために作り出された叡知が、人間から栄養を奪い死をもたらすのだ。


 研究データと結果を残せる限り残した。自分の身に何か起こった時には誰かが意思を引き継いでくれる事を願っている。]

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