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短編小説  作者: ま行


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廃墟にて

 最近どうにも居心地が悪くて仕方がない。幽霊になって幾年月、思い返せば長いこと幽霊をやっている。私はいわゆる悪霊というやつで、時には此岸の者を呪い殺したりもする。


 ただ悪霊といえども居場所が必要だ、たださまよう亡霊では様にならない。やはり土地や家屋に居ついてこその悪霊だ、とにかく人と接する機会がなければ、私はただの見える人が限られたふわふわとした存在になってしまう。


 という訳で最近居ついた廃墟は、有名な心霊スポットであり最初はよく人が来た。それだけではない、心霊スポットは悪霊にとって居心地がいい、よく驚いてくれる、反応もいい、霊障も捗る捗る。


 しかしそんな調子のいい悪霊ライフを送っていたのに、いつの間にか人の往来がぱたりと止まってしまった。夏が過ぎ、心霊スポット巡りの季節が終わったとはいえ、こうも人が来なくなるのは経験がなかった。


 ただしぱったりと人が来なくなった訳ではない。何度か人が訪れているのは分かっている。数は一人、毎回同じ人だ。しかし一向に姿を見たことがないのだ。


 これがどうにも気持ちが悪い。いると分かっていながら見つからないことがこんなにも不快だとは思わなかった。度々ここを訪れる誰かは一体どこで何をしているのか、ああ本当に居心地が悪い。




 最近とても幸せだ。麗しのあの人をこうして陰で眺めることが至上の喜びなのだ。僕は今まで愛というものを知らなかった。それがこうも変わるのだから恋とは不思議なものだ。


 無理やり連れだされた肝試しで訪れた廃墟。何気なく目に映ったのは人ならざるものであった。いわゆる地縛霊というやつだろうか、僕はこの霊に心奪われた。


 この霊をこっそりと見つめるためにあらゆる勉強をして、色々な霊能力者の元で修行をした。そのかいあって今はすっかり霊に見つかることなく眺める方法を身に着けた。


 ああ、今日もあの霊は廃墟をうろうろとしている。何かを探しているようにずっと廃墟を動き回っているのだ。一体何を探しているのだろう、未練を残した何かを探しているのだろうか、想像するだけで胸が躍る。


 この愛を伝えられる日がくるのが待ち遠しい、それまではこうして見守り続けていよう。幸いここは廃墟、人はあまり来ないし僕が仕掛けた罠のおかげで人も動物も近寄らなくなった。


 二人の時間を何にも邪魔されるものか、この前無理やり入り込もうとしてきた馬鹿は、今は冷たくなって土の下だ。勿論ここからは遠く離れた場所に埋めた。万が一幽霊になってあの霊と接触されたら、僕は嫉妬で狂ってしまうだろう。


 この廃墟にて愛を知る。ああ本当に居心地がいい。

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