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短編小説  作者: ま行
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掃除当番

 ああ面倒だ、ビルの階段を登りながらそう考える。自分が選んだ仕事とはいえ、掃除というものは案外疲れる。


 汚れは中々落ちないし、ゴミの処理は大変だ。分別だってちゃんと考えなくてはならない、一口に掃除だと言ってもやることは沢山あるのだ。


 しかし世間様はそうは思っていない。報酬を用意して、内容を伝えて、後は頑張ってねでおしまい。まあそういうサービスなのだから仕方がない、愚痴というのは尽きることのない湧き水だ。


 営業はニコニコ笑顔で何でもやりますと仕事を取ってくる、だから食いっぱぐれないと言われればそうなのだが、最近いつ休んだかと考えると嫌になる。


 色々と考えていても仕方がない、早速取り掛かるとしよう。まず窓を念入りに拭く、キッキッと音が鳴る。道具を次々と使い分けて手順を進めていく、こう言うのは順番が大切だ、いい仕事をしようって時には形式に則るのが重要な時もある。


 カチャカチャとモップを組み立てる、頑固な汚れもこれで一発だ。まあ使い慣れるまでに時間はかかったけれど、今はこれがないと仕事にならないものだ。


 汚れを見つけると狙いを定める、この汚れを落とすんだという気合が必要だ。掃除を請け負う者として、汚れを落とすことが出来なければ意味がない。無意味は悪だ、最後までしっかりとやらなくては。


 モップでゴシゴシ簡単なものだ。汚れは落ちた。後は後片付けをするだけ、テキパキと処理を終えるとその場を後にした。




「やあ、いつもご苦労様」

「いえこちらこそ」


 すれ違った清掃員にたまたま一緒に歩いていた先輩とその部下が挨拶をした。清掃員は爽やかな笑顔で挨拶を済ませると立ち去っていく。


「律儀ですね先輩も」

「俺達が綺麗な職場で仕事が出来るのは彼らのお陰なんだぞ?感謝の気持ちが大切なんだ」

「はいはい。だけどあの清掃員さん見たことないなあ、新人さんですかね?」

「さあそこまでは。当番の人をいちいち覚えているか?知らない顔でも見間違いだよきっと」

「それもそうっすね。…しかしさっきから外が騒がしいですね、何かあったのかなあ」

「事件に事故に、何だってあるさ。そんなことより次の会議資料だけど…」


 仕事を終えた清掃員は静かに去っていく、彼の行方をつかめるものは誰もいない、人の中闇の中どこにでも現れるし消える、消せと命じられたゴミを掃除して世間を騒がせるが、その掃除当番の正体が判明する事はないのだ。

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