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短編小説  作者: ま行
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糸電話の先

 ある日突然壁から糸電話が現れた。壁に糸が出ていて、その先に紙コップがついている。まごうことなく糸電話だ。


 私は隣の部屋の人に声をかけて確認した。正直「あなたの部屋に糸電話ついてますか」と聞くのは勇気が必要だったが、不気味だし聞くしかなかった。


 隣の部屋には糸電話はなかった。私の部屋を確認してもらったが、やはりこちらの部屋にだけ糸電話が出ているようだった。


 私はこの糸電話の扱いに困った。大家さんに相談すればいいだけの話ではあるのだが、自分が何かした訳でもないのにいちゃもんを付けられても嫌だなと思うと中々行動出来なかった。


 それにもう一つ理由があった。というかこの理由の方が大きい、この糸電話の先が何処の誰に繋がっているのかが気になった。


 恐る恐る紙コップを手にとってみた。しかしいざ何か声をかけようと思ってみても、相手が誰かも分からない場合何を言うのが正解なのか分からない。


「こ、こんにちは」


 こういう時は挨拶だ。当たり障りのない完璧なコミュニケーション、挨拶が大事だと学校でも教えるんだから。


 しかしこちらの呼びかけに何か反応が返ってくる事はなかった。それはそうだろう、糸電話は相手が耳に当てていないと成立しない、私が声をかけたタイミングで相手がそれを聞いているとは限らないのだ。


 そうだよなと一人頷いていると、紙コップが振動しているような気がした。耳を当ててみると、驚く事に声が聞こえてきた。


「えっと、こんにちは。聞こえてますか?」

「あっ、はっ!はい!聞こえてます」

「え!?聞こえてるんですか!?」


 相手は声は低く落ち着いた声色だった。男の人だろうか、兎に角驚いているのは分かる。


「ええ、聞こえているんです。その、こちらも驚いていまして」

「そうですよね…」


 聞くに、相手もまた急に壁から紙コップが現れたらしい。そして私と同じようにどうしたものかと悩んでいる時に、私の声が聞こえてきたそうだ。


 更に不思議な事に、相手が住んでいるのは外国で、喋っている言葉は日本語ではないとの事だった。でもこちらでは日本語に聞こえる、イントネーションが違うだとか、そんな違和感は一切なかった。


 しかも次の日には別の人が糸電話の先に出た。また別の国の人だった。全然別の言語を喋っているそうだ、そんな感じはまったくないのに。


 不思議な糸電話が壁に出現して時間が経った。いつの間にか私の楽しみは今日はどこのどんな人と話が出来るのだろうというものになった。あまりに奇妙で不気味な出来事でも、人生の楽しみに変わるのだから何があるか分からないものだ。


 今日もまた私は糸電話の紙コップを手に取った。


「こんにちは!聞こえてますか?」

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