魔法使いと弟子
苦節六十年、人生のほぼすべてを魔法に捧げてきた。しかしこれだけ人生を捧げても魔法の世界はまだまだ奥深く、その深淵に辿り着けはしないだろう。
儂も老いた。若き頃の勢いはもうない、それに魔法にかまけていて子孫を残すという行為を疎かにした。儂は儂の力だけでその真髄に到れると驕り高ぶっていたのだ。
人生と言って過言ではない儂の魔法の数々、死したのちに見ず知らずの有象無象共に貪られてしまうのは我慢がならなかった。そこで儂は弟子を取る事にした。
才のある若者だ、儂の魔法を受け継ぎ順当に学んでいけば儂よりも偉大な魔法使いになれるだろう。儂は期待を込めて弟子に儂のすべてを教えた。何もかもを弟子に伝えて満足すると、儂は長い魔法使い人生の幕を下ろした。
魔法使いと弟子は再開を果たしていた。そこは死後の世界だった。ただし魔法使いの顔は呆れた表情だった。
「確かに儂はお前に儂のすべてを教えた」
「はい先生。確かにすべてを学びました」
「お前は第二の儂と言っても過言ではない」
「はい先生。恐れ多い事ですが私もそう自負しております」
弟子の言葉に魔法使いは頷いた。確かにそうだと思ったからだった。
「しかしな、儂と同じ様に恋愛下手まで引き継ぐ事なかろう!しかも弟子も取らずに死におって馬鹿者め!」
弟子は確かに魔法使いのすべてを受け継いだ。しかし余計な性格も受け継ぎ切ってしまった上に、弟子には致命的なまでに対人能力に問題があった。
しかし叱りつけている魔法使いも同様に対人能力には問題があった。その事を棚上げして叱りつけてはいるが、結局彼の写し身となった弟子は魔法使いと同じ道を辿る他なかったのだ。魔法使いは、自分の知りうる事以上の事を教える事は出来なかった。




