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短編小説  作者: ま行
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前人未到

 記録、もう何番目か覚えていない。兎に角沢山の記録の内の一つだ。


 今日また一人天へと旅立つ仲間を見送った。最後は私が手をかけた。苦しみを長く続かせない為だ、あいつもそれを望んだ。だから楽にしてやった。


 それでも数多の犠牲を乗り越えて長く続けるこの探索には一体どんな意義があるのだろうか、最初の内は皆に高い志があった。かく言う私も同じ志を抱いていた。しかしもうそんな気持ちも枯れ果ててしまった。


 何故目指すのか分からない、どうしてだ、多くの屍を築き上げ何故目指す。ああ違うな、目指さなければ駄目なのだそれが使命なのだ。分かっているのに気持ちはどんどん揺らいでいく。


 この広がり続ける宇宙で、私はずっと漂い続けている。目指すは人の生きる事が出来る新天地、誰も到達した事のない楽園だ。


 地球はすっかり住む事の出来ない場所になってしまった。そうして結成されたのがこの探索隊だった。私はその名誉ある隊長に選ばれた。


 しかし人の住めそうな星はいつまで経っても見つからなかった。どの星もどの星も、我々が生きていける星はない。私達はきっと見捨てられたのだ、もう何処にも生きていく場所はないのだと、そう現実が突きつけるのだ。


 もうやめよう記録は終了だ。


 私は記録を切った。残す意味もないのに続けていたが、もう覚悟も決まった。私の生命維持装置も切ろう、皆の所へ私も行くのだ。


 しかし急にアラートが鳴り始めた。私は急いで計器の数値を確認した。するとどうだ、すべての条件が生存に適した場所ではないか。やったと心の中で歓喜した。これでやっと、皆の本懐を遂げる事が出来る。


 私はすぐにその星へと降り立った。ああ、自然豊かな美しい星だ。ようやく、ようやくだ、私は前人未到の地にようやく辿り着いた。




 小さな発砲音が響いた。それは隊長が天に旅立った音だった。


 調査の結果が分かった。ここは元いた地球だった。ただ人が消え去った後の地球。隊長は長い長い調査の旅で気が付かなかったのだ、ここが故郷の星だったなんて気がつけなかった。


 隊長の骸もいつかこの星の土へと還るだろう。いつかまた地球に新しい命が芽吹く時が来るかもしれない、しかし今この星で生きる最後の人は死んだ。多くの犠牲を積み上げた先にあった前人未到の地は、夢にまで見た地球だったのだ。


 無念の果に死を選ぶ事を誰が責められようか、風はただ穏やかに吹いて去っていった。

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