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小石

作者: わこう

少しだけ、ほんの少しだけの非日常。


……………なあなあ、ちょっと「私」の話を聞いてほしい。

 


 帰り道にさぁ、自宅まであと数十メートルって言う所で、ふと視線に先にいるものに気が付いて、足を止めたんやけど…。……2.5メートルぐらいかなぁ、大きな黒い影が立っててん。家までの道には等間隔に街灯があるんやけど、その街灯に照らされてるのに、黒い影は黒いままやってん。


「なんやろ、あれ…」


 ……そんなわけないんやけど、もしかしたら、不審者かも…と、思ったら横を通りすぎるのも怖かったから、近くにあった自動販売機の陰に隠れてしばらくの間その黒い影を見てたのね。

 黒いあいつは、こっちに気づいていないみたいで振りむくことなく、並んてる家の一つの前に立っているだけ。…1分ぐらいかなぁ、少しして動いたかと思ったら、今度は隣の家の前に移動して、また同じようにその家をじっと眺めて立ってる…っていうのを、順番にやってるの。

 しばらくこっそり見てたんやけど、なんかもう、疲れてきたし、早く家に帰りたいし…、で、だんだん怖い気持ちよりめんどくさいって気持ちの方が強くなってきちゃって…、ふと、逆方向から帰ったらいいやん!と思って、そぉっと、その場から離れたの。


 ──────って、夢を見てん。




 その後、別に変わった事もなかったから夢の事なんてしばらくしたら忘れてたんやけど、夢を思い出す出来事がちょっとあったのね。

 たいしたことじゃないんだよ。

 ほんと、たいしたことじゃなかったんやけどね。

 まあ、聞いて。



 一昨日の夜、ごみを捨てに行こうと思って外に出たら家の前になんかあってん。なんやろうと思ってさぁ、見てみたら、卵よりちょっと小さいぐらいの、白くて丸い平べったい小石やってん。その時は気にせーへんかってんけど、ゴミ捨てから戻ってきた時も、勿論やけど小石はまだそこにあってさ。

 辺りはもう暗いのに、その白い小石だけがすごく目立っるもんやから、それが目印みたいに見えて、なんか嫌やなぁって思ってさ。

 ……それでその…、なんとなく…、なんでか分からへんけど、この前の夢のことを思い出したんやんかぁ。

 うわっ、って思って、思わず小石を蹴とばしてん。

 そしたらさ、小石はカツン、カツン、って小さな音を立てて、別の家の方に転がっていったから、ちょっと、ほっとして家に戻ってん。


 それでさ、次の日の朝、めっちゃ騒がしくって、何かなぁ…?って思ってたら、近所にパトカーが来ててん!

 何事?!と思って親と一緒に外に出てみたら、近所の人たちも同じように外に出てたからさ、何があったんか聞いてみてん。どうやら近所の家にさ、夜中、泥棒が入ったんやって。それのでその被害にあった家っていうのが、自分の家から2軒隣で、前日に小石が転がっていった家やってん。

 ちょっと嫌やなぁ…、とか思ってたら、色々聞いてきた母親が、事のあらましを教えてくれたのね。

 曰く、ご近所さんが、夜中に気配がして起きたら部屋の中に黒い大きな人影が立っていて、びっくりしていたら顔を覗き込んでいなくなったって。怖くって気を失ってたらしくって、朝、慌てて警察に連絡したんやって!

 結局、盗られたものは何もなくて、怪我もなくて良かったね、っていう話で終わってん。

 物騒だねぇ、戸締りしっかりしないとね…。なんて近所の人達と母親が話しているのを横目に、家に入ろうとしたらね。


「まぁちがぇたぁあぁぁぁぁあぁぁ??」


って、すぐ耳元で聞こえてん。

 びっくりして辺りを見回したんやけど、勿論声の主がいてるわけないやん。

 暫くは怖かってんけど、まあ、声が聞こえたのはその時だけで、あとは何もないんやけど…。


 そんでな、今になって思うんやけど、あの蹴り飛ばした小石って、目印だったんとちゃうかなぁ……?


 何のためのって?

 そんなん知らんけど。

 でも、その大きな黒い影は、ほんまは家に来る予定やったんとちゃうかなぁ…、って。

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― 新着の感想 ―
[一言] 読みやすく、どこか惹かれる話の書き方でとてもよかった
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