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義弟の変化

 ジェラルドが馬車の事故の男性を特定し、手紙を送ってくれた。しばらくはその事故の記憶に引きずられ、落ち込んだりもしていたが、穏やかな日が続いた。

 部屋でゆっくりとお茶を味わっていると、貴族学院に通っているシリルが顔を出した。シャルロットには側付きのメイドはいない、自分で出迎え相手をする。

 シリルが部屋を訪ねてくるのは、険悪になってからは初めてだった。

「これ。」

 そういって、紙の袋を突き出した。

「?」

「学院で流行ってるお菓子。」

「あの・・・買ってきてくれたの?」

「別に。たまたまです。」

 ふいっと顔をそむけるシリルに、お菓子をくれたお礼に礼儀として一緒にお茶をしないか誘った。


 断ると思ったが意外にもシリルはおずおずとシャルロットの前に座った。ベルで呼んだメイドにドアの前までお茶を持ってくるよう頼んだ。

 しかし話は全く弾まない。お互い無言でお茶とお菓子を口にする。

(ええ~と。新たな嫌がらせかしら)

 いたたまれない雰囲気だが、自分の部屋だから逃げるわけにもいかない。

「シリル、ありがとう。とてもおいしいわ、さすが評判になるだけのことはあるわね。」

「・・・また買ってきます」

(ええ~本当に一体どうしちゃったの。なんか企んでたり?)


 ずいぶん逡巡していたようだが、聞きたいことがあったようだ。

「姉上はどこかお悪いのですか?すごく苦しそうだった。」

「びっくりさせてごめんなさい。いえ、病気ではないわ・・・その時々発作が起きるだけで。」

「発作って!それ病気じゃないですか!医者にはかかってるんですか?」

「お医者様にかかるほどではないの」

「・・・僕なんかには・・・言いたくないですよね。」

「そうじゃないわよ?!そうじゃなくて・・・本当に大した事がないから心配しないで。」

(なんなのよ~、調子狂うんだけど。)

 いつもなら無視か、「あんな大勢の前でみっともない。男の気を引こうとでもしたんですか?」って冷ややかに言い捨てそうな気がする。

 体調に問題はない、という返事に全く納得していない顔だがとりあえず、それ以上は追及してこなかった。

「お茶…ありがとうございました」

 そういって出て行った。

 シャルロットには気疲れだけが残された。


 しかしそれ以降、シリルはこうしてちょこちょこ流行りものを買ってきてくれるようになった。


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