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死を見る令嬢は義弟に困惑しています  作者: れもんぴーる


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シリルの独白 1

 残されたシリルはシャルロットを見つめながら髪を梳いていた。

 このか弱い体でこれまでどれだけの人を救ってきたのだろう。ジェラルドやニコラなどがいたと言っても、世間からは冷たい視線を浴び、一人で抱え耐えてきたシャルロット。自分なら、すべてを投げ出して閉じこもっていたかもしれない、他人を救おうなんて思いもしなかっただろう。


 目の前で眠る気高く優しいシャルロットが愛しくてたまらない。

 どうしたらシャルロットの抱えているものを軽くできるだろうか、自分が支えることができるだろうか。

 自分がそばにいることを許してくれるだろうか。

 ・・・愛してくれる日は来るだろうか。


 あの日のことを、つい思い出す。忘れることができない自分の罪を。

 そしてふと思った。自分だけに特別な力があるのは彼女と契りを交わしたからではないか?と。身勝手な一方通行なもの。

 もしそうなら、自分の非道な行いが、結果的にシャルロットを助けたことになる。そしてそのポジションは自分以外に取って代わられることはないのでは?と思い当たった。

しかし自分がしたことを思えば素直に喜べない。そう自分を戒めるも、胸の高鳴りは治まらなかった。シャルロットが目覚めるまで、反省と高揚の繰り返しだった。


 3日後、あとの指揮はニコラと連れてきていた宰相補佐に任せるとエリックは王都に戻っていった。幸いにして軽い怪我を負った者はいたが、大怪我をした者も死者も出なかった。建物の倒壊はあちらこちらに見られた。

 今後の支援に関して王都に戻らないとできないことも多い。現地でおおよそのめどがついたと優秀な王子は帰っていった。


「エリック殿下はとても優秀なお方ですね。ニコラ様が尊敬されるのがわかりますわ。」

「確かに。父上が第二王子を推すと決められたが、納得です。今回の件だけでもその判断、采配と行動力どれをとっても目を瞠るものがありました。」

 シリルも感嘆する。今回、エリックの手腕を目の当たりにし、また自らもその指示に奔走した身となり、エリックの優秀さを身をもって体感した。

「ええ、私もエリック様がこの国の王になることがこの国の繁栄につながると信じていますわ。」


 ジェラルドが第二王子派と表明したのは、シャルロットのことを口留めするためだけではなかった。

 シャルロットのことを命の恩人だと感謝していながら、シャルロットの秘密を匂わせてくるエリック。狡猾ともいえる情報の扱い方とその清濁併せ呑む立ち回り方に王としての器を見たからだ。

 そういう腹黒い部分を知らないシャルロットとシリルは純粋に、エリックの優秀さに感銘を受けていた。

 

親愛なる第二王子をほめたたえる二人に対して、ニコラだけが、

(怖いんですよ、本当は。人当たりがいいからそうは見えませんけどね、容赦ありませんよ。)

と思っていた。


 この地震のおかげで少々予定が狂ったものの、もう少ししたら王家で大騒動が起こることだろう。


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