第5話 人のぬくもり
カイトに服を貰い、村長の家まで手を引かれながら歩く。
村の雰囲気は年齢層高め、見回した感じカイト以外みんな40以上だろう。
「キョロキョロすんな、前見て歩け転んで服汚すなよ」
注意された。村の道は舗装されていない地面むき出しの状態だ。それに木造家屋しかない。周りの緑と調和して凄くのどかだ。
村の中で一番大きな屋敷の前に着いた。
「村長いるか?入るぞー」
声をかけ勝手に屋敷の中に入るカイト
「おっお邪魔します。」
光一も中に入る。
ドタドタ!
前からものすごい勢いで老人が杖を振り回しながら走ってくる。
「くぉらあー!カイト貴様!成敗してくれる!」
「またかよ…。面倒だな。」
光一はカイトに村長の眼前に突き出された。
「ひっ!」
光一を見た村長はカイトを睨みながら
「カイト!貴様、何処の子攫ってきた!」
凄い剣幕でカイトに詰め寄る。
「あ〜違う違う。攫ってきたんじゃなくて、洞窟で拾ったの。裸だったし、モンスターに襲われてたからな。犯罪めいた背景は一つもない、ドラゴン倒してきたから皆んなで肉食おうよ」
村長はカイトを無視し
「こんなに震えて…カイトが怖かったのじゃな。よしよし、怯えなくていい。ワシの名前はゼル、この村で村長をしておる。村長と気軽に呼んでくれ。
さて君は何という名前で何才で何処の村の子かの?ここいらでみない髪の色と目の色をしとるしのう。両親はおらんのか?」
光一の頭を撫でながら、矢継ぎ早に光一に質問する村長。
「ひっ、いえ、カイト様は助けてくれた、恩人です…。
名前は光一です。歳は10歳です。産まれた場所や故郷は覚えてません…。家族はいないです。2人とも亡くなってるので…。すみません…。」
光一の両親は日本でだが交通事故で既に他界している。
カイトには伝えていなかった。その為カイトは光一の家族が死んでると聞いて苦い顔をしている。
「しっかりと受け答えができるとは良い子じゃなあ。産まれはわからんかあ。家族が亡くなっていたとはなあ。すまん…。無神経な質問をした許しておくれ。」
光一にしっかりと頭を下げる村長。
「いっいえ大丈夫です。すみません…気を使って頂いて…。」
村長は優しい目を光一に向け
「光一君はこれから何をなしたい?この村は静かじゃが村人も皆良い人ばかりじゃ。暮らすなら皆が助けてくれよう。もちろんこのゼルもそこのカイトも君を助けよう。それとも故郷を探したいかの?」
「でっできればここに置いてください…。掃除や雑用ならできます。料理もきっと…。他には何もできないけど、それだけなら…。 」
村長は無言になり考え込む。光一の眼の中には恐怖しかない。
相当辛い思いをしたのか、雑用と言っていたが奴隷の様な扱いをされ、捨てられたか。カイトの手を握って離さないのは捨てられると思っているからか?
言葉遣いは丁寧だが、それも恐怖からだろうと村長は結論付けた。
「ふむ…。光一や、子供の仕事は何か知っておるかね?」
「子供の仕事ですか…?掃除や雑用以外でしょうか?すみません…わかりません。」
村長は怯えながら答える光一を抱きしめて頭を撫でる。
「そうじゃない。そうじゃないんじゃよ。子供は明るく元気に遊んでいたらいいんじゃ。お家の手伝いをするのは良い事じゃ。だけど子供は夢を見て追いかけ、元気に育つ。これが一番なんじゃよ。」
光一は抱きしめられ戸惑ってはいたが、この世界で初めての出来事に感動した。カイトとは違い温もりを伝え、安心をくれた村長の優しさに。
光一は年甲斐もなく、泣き喚きながら喋った。
「……くらくて、こわくて、いたくて、カイトさまがたすけてくれて、でもおいてかれる、すてられる、の、が、こわくて……「大丈夫じゃ、大丈夫じゃ捨てはせん。もう誰も傷つけはせん。光一はここに居ても良いんじゃよ。」
光一は村長にすがりつきながら泣いた。
「村長後は任せていいか?俺は皆んなに肉配らないといけねーから。」
ぶっきらぼうにカイトは言い村長の家を出て行く。
「ああ、後で皆んなに光一を紹介せねばならん。そうじゃの、夕刻広場に集まるように伝えておくれ。」
「ああ。わかった。じゃあ光一を頼む。」
緊張の糸が取れ泣き疲れて村長に抱きついて眠る光一を見てカイトは少し安堵の表情を浮かべていた。
カイトに対しては怯えながらも必死に文句を言わずついてきた光一。
自分が刃を向けた事を村長に言わず助けを求める事もせず、自分の腕を必死に握っていた光一。
村長に光一を預けて村人達を集めながらカイトは考えていた。
(ガキはわかんねー。あいつずっと怯えてたなあ、殺気当てて剣突きつけたら当然っちゃ当然何だが。
何でずっと手を離さなかったんだろうな。逃げねーし
はあ、光一も親いねえのかあ。Lv 1じゃ直ぐに死んじまうよなあ。)
考えるのは何故か光一の事ばかり。
タイランドドラゴンの肉を空間庫から出し、村の皆に渡し隅っこに座りながらカイトは1人考えていた。
(親もいない、故郷も分からない。そんな状況のガキが幸せか?この村にいるにしたって家事だけで男が生きて行くのは難しい。Lv 1だし、狩なんて1人じゃ出来ないだろうし。鍛えるしかないよなあ。
人に物を教えるのが苦手だ。特にガキは苦手だ。かと言って村の連中じゃ碌に戦えないし、村長は俺に押し付けるだろうしなあ。少し考えなきゃならねえ、ああめんどくせえなあ。)
「おい、カイトさっきの子供はどうしたんだ?お前の子じゃあるまいし、攫ってきたのか?」
カイトの兄貴分であるシンが無言で佇んでいたカイトに話しかける。
「シンさん、冗談言わないでよ、周りから誤解されちまう。あのガキは修練場にしてる洞窟で拾ったんだよ。裸でモンスターに喰い殺されそうなとこを助けてやったんだよ」
カイトが苦笑いしながら答える。
「カイト…不気味だから笑うならちゃんと笑った方がいいぞ」
小馬鹿にしたようにカイトをからかうシン。
「でカイトあの子はこの村に住むのか?」
「ああ多分な。今村長の家で寝てるよ。あいつは行くあても身寄りも無いし、ここで暮らすんじゃねーかな。」
「そいつは何て言うか辛え話だ。このご時世だから良くある話とは言え。可哀想な子だなあ。あの子何才で何て名前なんだ?」
「歳は10で名前は光一だ。Lv 1何だと、弱過ぎるよなあ。あのLv じゃ狩もできやしない。」
「レっレベル1だあ?!良く生きてこれたな今まで。運が良いのか?いや捨てらちまう位だから悪いのか?うーむ」
カイトから光一のレベルの話を聞き唸り声をあげながら考え込むシン。
この世界では普通10歳にもなればレベルは5はあるのが普通。よっぽどの事情がない限り10歳でレベル1はあり得ない数値なのだ。
光一の将来は前途多難である。