第1話 光一君が死んじゃった
第1話 社畜の光一君が死んじゃった(笑)
柳瀬光一は介護士である。
どんな仕事をしても続かなかった光一が介護士だけは長く続けられていた。
コミュニケーション能力だけはある光一、介護士として日々サービス残業、パワハラ当たり前の職場でうだつの上がらない生活をしていた。
「今日もサービス残業かあ。残業代貰えてたらもっとまともな生活できるんだろうけどなあ」
ぼやきながら仕事をする光一、転職する度胸も無く、会社に意見することもできない光一は日々の生活を我慢しながら続けている。
唯一の救いはご利用者様から慕われ、優しくされる事だけだった。
光一のいる施設は、二階三階にベランダがあり、ご利用者様達もベランダに出て寛ぐ事もできる自由度の高い施設だ。
その自由度が自分の死因に繋がるとは光一は夢にも思っていなかった。
この日も三階部分のベランダで寛ぐご利用者様を光一は見守っていた。
突如大きな地震が起こる。耐震構造があるはずの施設だが建物にもかなり大きな揺れが起きている。
ご利用者様達はパニックになり、ベランダはもちろん、施設内でも半狂乱状態。
「ひえー!空襲じゃ空襲じゃ!」
「今日は地面が揺れてるねえ」
「あばばばばばばばばひゃー」
「おんなおんなおんなー!」
「お助けを〜」
「慌てる時間ではない、地面が揺れてるだけじゃ、皆わしに続けー!」
混乱の中ベランダから柵を乗り越えようとするご利用者様
「あっ!待てそっちはだめだ!」
光一が叫びながらご利用者様の方へ走る。
ダッシュで飛びつきご利用者様の身体を捕まえる。
「離せー!離すんじゃ!わしは避難するんじゃー!」
凄い力で暴れながら光一を振りほどこうとする。
「ダメだって鈴木さん!落ちたら死んじゃうよ!」
鈴木さんと呼ばれた利用者は以前から認知症の他に軽度のパニック症状があり、要注意人物だった。
軍隊経験者であり今でも体力だけはかなりある、鈴木さんを必死に光一が捕まえている。
もう一度先程より強い揺れの地震が起こる。
バキっ
音が聞こえたかと思うまもなく、ベランダの柵が壊れた。
「あっ」
鈴木さん共々転落していく光一君。
グシャッ
この日光一君は鈴木さん共々転落死してしまった。
そして光一は神様と出会うのだった。