ラブレター
いやー、リアルが忙しくて半月ぐらいかけませんでした…
35歳。同級生は結婚している人が増え、なかにはもう中学生の子供もいるやつも出てきた。
自分はというと、ここ最近は女っけもなく、唯一愛を注いでいるのは家によく来る野良猫ぐらいだ。
今日も友達の子供が産まれたと連絡があったのでお祝いをしにいった。
「桜木!久しぶりだな」
「お、桃田!待ってたぞ!ありがとうな!さぁ中に入ってくれよ」
家の前で待っていたこいつの名前は桜木壮介。クラスで、よく一緒にバカやっていたやつだ。
高校、大学と女には困らなかった俺とは裏腹に、こいつには中学校以来彼女はいなかったはずなんだが…
「あれだけ彼女欲しいって騒いでたお前に先越されて、子供まで…いやー人生わかんないもんだな」
「あの女大好き百戦錬磨の桃太郎に勝てるとは思ってなかったよw」
「その通り名、懐かしいなw」
そう言いながら家の中に入る
「あ、桃田さん。きてくださってありがとうございます」
「どうも!あ、おめでとうございます!これお祝いです。」
家のなかで出迎えてくれたこの人はすみれさん。桜木の嫁さんだ。こういうと良くないかも知れないが名前にぴったりの美人で桜木には勿体ない気がする。
「あぁ、お祝いなんていいのに。そんなので呼んだんじゃないぞ」
「まぁ貰っておいてくれよ。どーせ俺は独り身だし親友のお祝いぐらいさせてくれよw」
「ありがとうな。じゃこっち来てくれ」
奥の部屋に案内される。
「かわいいな…」
「だろ。そりゃすみれと俺の子供だもんな」
子供用の小さなベットに手を広げて寝ている
「名前は?」
「幸せが実るって書いて幸実ってつけたよ」
「桜木幸実か。お前にしては良い名前つけるじゃないかw」
「どう言うことだよ。あ、起きちゃった…おかーさーん」
桜木はすごく幸せそうだった。そりゃそうだろう美人な奥さんにかわいい娘まで手にいれたんだ。
いざ、目の前で幸せをみてしまうと羨ましくて仕方なかった。
そして意味もなく、好きでもないのにやたらと付き合っていた自分が恥ずかしくなった。
「何が百戦錬磨の桃太郎だよ…」
桜木の家からの帰り道。落ちていた石を蹴飛ばし、恥ずかしさから逃げるように家に向かった。
家につき、郵便受けに入れてある鍵をとろうとすると、中に1枚の紙が入っていることに気づく。
「封筒?」
入っていたのは白い封筒だった。宛先も書いてなければ送った人の名前もなく切手も貼っていない。直接郵便受けにいれたんだと理解する。
「ちょっと怖いけど見てみるか」
部屋に入り恐る恐る封筒を開けると紙が入っていた。
<こんにちは?こんばんは?
すいません急にこんなもの送ってしまって…実はあなたのことをずっと気になっていて本当は直接あってお話をしたいのですが…訳あって手紙で失礼します。これからもこうやって手紙でやり取りできたらなと思っています…>
うーん。どういう意図の手紙なのか。新手のいたずらか。違うとしても返事したくても住所も名前も無いんじゃどうしようもない
とりあえずまた来るかもしれないと思い封筒に返事を書いて郵便受けにいれておいた。
<手紙読みました。名前くらい書いておいてください。
返事はしますので。>
次の日、仕事から帰ってくると昨日の封筒のかわりに手紙が入っている。
<返事嬉しかったです!でも名前は…でもこうやって話せるのが嘘みたいです。また返事待っています。>
文は短い。返事嬉しかったです!の文からわかるようにその場で書いていることがわかる。何者なんだろうか。
名前も書かない手紙の相手に興味が出てきた。そしてまた返事を書いて郵便受けにいれる。
<そんなにしゃべりたいなら話しかけてください。それより私はあなたが思い当たらないのですがどこで私を知りましたか??>
仕事から帰るとまた手紙が入っている。
<私もできることなら話したいんですけどね…。あなたを知ったのはすこし前です。あなたは気づいていないかも知れませんが結構会っていますよ?>
全く思い当たらない。ここ最近話した女の人は仕事場のおばさんとすみれさん、あと隣の家のあおいちゃんっていう女の子だ。でも5歳のあおいちゃんに漢字が書けるとは思えない。
とりあえず、また返事を書くことにした。
<うーん。思い当たらないです。知らないうちに私が話しかけてしまったのかもしれませんね…他になんか接点ありますか?>
土日と仕事が休みだったので手紙を持ってくるのを待っていたが手紙をとりに来ることはなかった。
にゃー。にゃー。
かわりに猫が来たようだ。猫は綺麗な黒い毛並みをしている。ドアをあけ、エサをあげるのは毎度のことである。
「お前が人間だったらな…しっかり飯くって元気に長生きしてくれよ」
エサを食べ終わると猫は撫でて欲しそうに体を擦り寄せてくる。猫が気がすむまで撫でてあげるとサーっとどこかにいってしまった。
月曜日また手紙が届いていた。今回は朝起きたら入っていた。夜のうちに来たのだろう
<接点ですか…多分ないですかね?あ、いっていなかったのですが。私、多分今週中にいなくなってしまうんです。残念ですけどよろしくお願いします!>
意味がわからなかったが返事が来ることが楽しみになっていた。
<どこかへ引っ越してしまうのでしょうか?あなたが気になっています。できればどこかにいってしまう前にお会いしたいです。>
仕事に行っている間、今日はどんな返事がくるのか気になって仕方がなかった。
<引っ越すわけではないんです。そんな気がするって話です。それに日曜日お会いしましたよ。>
日曜日は家にいたのであったわけがないのだ。。すこし怖い気がしてきた。
<日曜日は家にいたので会うはずがない気がします…そろそろ正体を教えてください…>
次の日朝起きると家の前に猫がいた。
にゃー、にゃー、にゃ
「今日はいっぱい鳴くな。どうしたの?ほらいつものやつな。」
必死に何かを伝えようとしている気がするが流石に猫語はわからない。
とりあえず撫でていると悲しそうに猫は去っていった。
郵便受けを確認する手紙が入っていた。
<私です。今ここにいる私です!いっつもご飯ありがとうございました。今日でサヨナラみたいです。もう少しもつ気がしたんですけどね。。体が思うように動かないんです。あなたは私によくいっていましたよね。お前が人間だったらなって。私もいっつも思っていました。あなたが猫だったらなって。大好きでした。さようなら桃田さん。>
手紙の正体は猫だという。そんなわけがないのに。嘘だと思ってるのにその日、俺は仕事を休み猫を一日中探した。もしかしたらと思い返事をかいて郵便受けにいれておく。
結局、猫を見つけることはできなかった。猫は一人で死んでいくとはよく言ったものだ。
その日からパッタリと手紙も猫も来なくなったことで最後の手紙の真実味が増す。
それから何ヵ月たったのだろうか。やっと俺にも春がやって来た。彼女はちょうど手紙が来なくなった頃転勤してきた。それもあってか少し縁を感じてしまい教育係りをかって出たのがきっかけで付き合うことになったのだ。
妙に人懐っこい彼女はまるで猫みたいだと思う。
今日は家に彼女をはじめて呼ぶことにした。
「桃田さんの家行くの緊張します…」
「緊張なんかしなくていいよ。もうつくよ」
家の前につく。彼女はおもむろに郵便受けをのぞく、あたかもなれたような動きだ。
「ん?何やってんの??あ、その手紙は…」
「何となく覗かなきゃって思って…」
彼女は手紙を開ける。
<本当かどうか自分も半信半疑だか、もし本当にあなたがあの猫なら、もう一度会って話がしたい。もう会えないなら、こうなる前に名前をつけてあげたかった。名前をつけてあげなかったから名前を聞いたとき答えられなかったんだもんな。ご飯は用意してるからもし生きてて、ここに帰ってきたらもうどこにも行くな。名前もつけるよ。みおってどうだろうか?>
「…」
「読んだのか、まぁ話せば長くなるんだけどな。自分も結構前に書いたから内容は覚えてないんだけどな」
「桃田さん。」
彼女は何か分かったような、なにか納得がいったような顔をして泣き始める。
「どうした。なんで泣いてるんだよ」
「私の名前…呼んでください。」
「ん?みお…」
「ただいま…」
「おかえりなさい…」
「今度はしっかりお話しできましたね…」
みおは<にゃ>っと笑った。
どういう風に見えますかねこの話