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残り12 オッサンと子猫と変身

ダンマスにゃ!よりも前から考えていた物です。




真夜中に煙草を切らしたので近くのコンビニに買いに行くことにした。この時間なら近所の人と会う事を気にする必要がない〜好きなのだ。だか寒空の中、黒いコートと黒のジーンズでは心許なかったか。




「っ!寒っ!」




小走り気味に急いでコンビニに辿り着く。この時間は店員は二名で顔見知りだが、俺は人と会話をするのが好きじゃない。なので特に会話とかも無く煙草だけを買ってコンビニを出る。帰り道の途中、ふと立ち止まって空を見上げる。雲一つない星空が広がっているのを眺めながら一言呟く。




「生まれ変わりたかったなぁ」




「なんなら変わってみるかい?」




背後から声がしたので振り向くが誰もいない。長い事引き篭もっているので会話が無ければ、独り言を言う頻度も少ないが幻聴を聞いて頭がおかしくなったのか寒さのせいにして、再び帰り道を歩き出すと




「人が声を掛けたんだから返事くらいしなよ」




「???」




「こっちこっち」




再び声を掛けられ振り向くがさらに声をかけられた方に見下ろすと確かに居た。人じゃなくて茶トラの子猫が。




「やっと気付いた。変わりたいか?」




なんだこれは。最近、犬ロボットが復活したのはニュースで知ったが猫は知らんぞ。だとすると”にゃいぼ”とか言うのか?




「人が聞いてるんだから返事くらいしなよ」




「喋るのか?このロボット」




「失礼な!ロボじゃないよ。ちゃんと名前はあるんだよ」





「どこに問い合わせればいいんだ?やっばs●nyかな?」





「目の付け所がシャープじゃないなぁ」




なん、だ、と……そんなネタも知っているとは。子猫のくせに中身は絶対オッサンだな。俺もオッサンだがな。それよりも飼い主は誰だ?それとも保健所に連絡か?あ、未知の生物だから警察か?





「いいから答えて。変わりたい?」




「さっきの独り言の事か?……変わりたいと言えば変わりたいかな」




「そう。なら右手の人差し指を出して」




「え、なんで?」




「いいからいいから」




言われるがままに屈んで右手の人差し指を差し出すと左前脚を乗せてきてなにかをつぶやいている。しばらくすると子猫の額が光出しその光が体を通じて左前脚にまで来ると俺の人差し指に移った。やがてその光は消えていった。





「はい。変わる力をあげたよ」





「? 見た目的に変わった感じがしないんだけれど」




「その人差し指を上に掲げてみて」




「こうか?」




「そうそう。次に時計回りに大きく回して真上で止める」




「お、おう。こう。んで?」




「真下に降ろしながらこう言ってね」




「こう。で、何て?」




「へんしん」




「変身」




すると周りが白く輝き始めた。ピンクの光が線を引き初めて俺を中心に四角錐の形を描くと四角錐はゆっくりと収束を始める。





「ちょちょちょ、なに?なんだ?」




収束が終ると違和感を感じた。なんか視点が低いし子猫が近く感じる。両手を見るとなんかちっちゃいし腕も細い。あれ、こんな服来てたっけ?




「あれで確認しなさいよ」




言われて道路にあるミラーで自分の姿を確認したらなんか幼女が写っている。黒髪ツインテールで黄色い帽子。上は薄いピンクのスモッグで下は濃いピンクのスカート。靴下は膝下までの白で靴は濃いピンク。トドメに黄色のカバンって




「幼稚園児じゃないかあああっ!」




声まで幼いじゃないか!え?何?どうしてこうなった!




「いや、変わりたいって言ったから」




「生まれ変わりたかったんだよ!これじゃない!これは変身!」




「見た目はアレだけれど、魔法少女だよ」




「嘘をつくな!どこがだ!」




「んージャンプしてみて」




言われるがままにジャンプするとどんどん上がっていく。あれ?俺ってこんなに跳べたっけ?二階建て一軒家どころか十階建てマンションも超えてる。やがて静止し降下を始めた時に気が付いた。




「お、お、お、お、落ちるうううううっ!」




降下スピードがグングンと増して地面に激突、はしなくて無事に着地できた。何この幼女は!って俺なんだろうけれど。実感が無いままボーッとしていると




「説明していい?」




「お、おう」




以下説明を箇条書きで記すと



この魔法少女について


・創造を司る魔法少女で【リエイ】と言う

・走るのは勿論、跳ぶどころか飛べる

・変身も変身解除も任意で出来る



創造の能力(というか創造魔法らしいが)


折り紙

・サイズは五センチ四方から新聞紙まで

・折ったり切ったり出来る

・任意に形を固定出来るし可動も出来る


粘土

・普通の粘土ブロック

・現実世界にある形にすることでその形の機能を持たせられる

・ただし重量もその形と同じになる




試しにカバンからA4の紙を二枚出して、二種類の紙飛行機を作ってみる。折り紙は得意な方で特に紙飛行機は子供の頃から色々と作っては飛ばしてきた。民家のブロック塀に向けて一つを飛ばすと天高く飛んで行った。子猫は




「えぇぇぇ。下手くそー」




「いいのいいの。んで、こっちをえいっ!」




もう一つも飛ばすとブロック塀に真っ直ぐ飛びズンッという音をして突き刺さった。それを見た子猫が




「おお、じょぉずぅー」




「ん、驚くのはまだ早いぞ」




俺は上を指指しながら言うのを見た猫が上を見るとさっきの紙飛行機が急降下してきてブロック塀の真上にズガッと音を立てて突き刺さったので驚いたようだ。




「こんなもんかな」




「すごいすごい!これならテストもバッチシだね!」




「テスト?」




「そう、テスト」




「聞いてないけ「今言ったもん!」って説明しろよ!」




「魔法少女の承認テストだよ。試験管と一対一で戦って五分以内に一撃当てれば合格。って痛い痛い!」




説明不足に腹を立てて子猫の頭を両手で掴み持ち上げてやった。なんだ、テストって!大体、魔法少女自体なるって決めたわけじゃないのにテストって!元に戻してもらわにゃ!




「テストがあるならやらない。元に戻せ!」




「無理。クーリングオフは受け付けてませんって痛いから!どーぶつ虐待だ!」




「知らん!なら変身解除して帰るまでって……解除出来ない?」




「テストに合格しないと無理だよー」




チクショウめー!このまま幼稚園児のまま生活って不自由過ぎるじゃないかよー!このクソ猫に嵌められたわ俺が悪いのか!仕方ない。




「テスト。受けるぞ。」




「よく言った、幼女は度胸!」




中身は四十代のオッサンだよ、トホホ。テストの前にアレコレと準備をして準備OKと子猫に言うと視界が一瞬で変わった。周りは何も無い、いや下には一面の雲。空の上にいるみたいだが落ちる事なく留まっていた。これが浮遊の能力なんだな。そして目の前には黒いフードを着て骸骨のお面を被った何かがいた。




「ヨウこそ、テストを始めヨうか?」




多分、コイツがテストの試験官なのかな。見た目的に死神にしか見えないのはどうかと思うんだけれどな。一応、確認しておこうかな。




「アンタが試験官でいいのかな?」





「あア。お前デ最後のテストだ」




「最後?最後って」




「ナんだ、キイテないのカ?魔法少女は全部で十人イル」




「聞いてないぞ」




「そウか。まあイい。テストのないヨうはキイテいるか?」




「ああ、そっちは大丈夫だ」




「なラいい。始めるぞ」




試験官はそう言い、微動だにしない。俺は先手必勝とばかりにカバンから四つ出して全部飛ばした。二つは真上に飛んでいき、残りは試験官に向かって真っ直ぐ飛ぶが試験官は上半身だけ動かしてキレイにかわした。




「ホう。使い方は分かってイるみたいだガ、このてイどではな」




「どうかな?」




天高く飛んで行った紙飛行機が急降下して試験官に落ちて行くがそれも体全体の向きを変えることで簡単にかわされる。




「なルほど。ジかんサとは考えタな」




「これで終わりと思うなってことだよっ!」




今度はカバンから五つの紙飛行機を出して三つを時間差で飛ばすと全部真上に飛んでいく。残った二つのうち、一つを飛ばすと試験官に向かって真っ直ぐ飛ぶが簡単にかわされる。すぐに真上から一つが試験官を襲うがそれもかわされる。手元にあるもう一つを試験官に向けて飛ばすがそれもかわされてしまった。




「残りは二つだナ」




「くっ!」




ここで俺はカバンに手を伸ばしてタイミングを測る。天高くにある残り二つの紙飛行機が急降下して試験官を襲い、試験官がかわした瞬間!




「ここだっ!」




カバンから出したものは粘土で作った鞭である。形が出来ているので鞭その物の機能と耐久がある。鞭を試験官に向けて振るうと鞭は試験官の上半身に巻き付き動きを封じた。





「こッちも使イこなせテルな」





「感心してくれてるけれど、これで終いだ」





「一撃ト認めてイいか微妙ダが……ふン、合格だ」




「ふぅ」




「コレよリ汝の力を解放スる」




試験官の体が白く光り始めると俺の体も白く光り始める。その光は少しの時間で消滅した。




「こノ鞭を解イてくれないヵ。」




「あ、ああ。よっと」




俺は鞭を解いて試験官を自由にした。自由になった試験官はどこからか姿見を出して俺を写した。そこに写っていたのは幼稚園児の姿ではなく白い帽子と法衣みたいなのを着た幼女だった。って幼女なのは変わらないのかよっ!確認を終えた俺を見た試験官は姿見を消して補足を含めた説明が入るのだが、また以下箇条書きにて



魔法少女について


・全部で十人いてそれぞれ違う魔法を持つ

・それぞれに【導きし使徒】というモノがついており、それが魔法少女になる力を与える(俺の場合は茶トラの子猫)



魔法少女の目的について


・【闇を纏いしモノ】が現れた時に退治する事

・また【闇を纏いしモノ】を統べる【不可視の深淵】を消滅させる事が最終目的




つまり、他の魔法少女と協力してその得体の知れないモノを退治しろってことかな。他の魔法少女も元はオッサンとかだったら絵的に駄目なんじゃないのか?これ、絶対にウケないだろう。そこまで聞いてちょっと疑問に思った事を聞いてみた。




「なあ、試験官さ。他の魔法少女も変身する時に……何かしないと駄目なのか?」




「ナンかとは?」




「…………ああ!もう!これだよ、これ!」




そう言って俺は先程変身する時にした仕草をした。それを見た試験官は




「それナ、無いと変身出来なイ。」




「のおぉぉぉおおお!」




「因みニ全員違ウ」




なんのプレイだよ!なんの意味があるんだこれ!お約束ってやつか?某ライダーみたいなやつか!なんで四十代にもなって黒い歴史を作らにゃいかんのだ!




「お前ハまだイい。酷イと呪文付キだ」




なんですか!プ○○ュアみたいな返信前の呪文っていうかセリフが必要なのですかっ!変身ポーズだけでも傷口に塩を塗る行為なのに、セリフ付きならそこにタバスコ塗布するような追い打ちが増えるなんて!それ、黒い歴史というか暗闇よりも黒い歴史だよ!ああ、俺はまだマシ……じゃないな!まあ、なんか試験官から同情されている気がしたので




「ああ……うん、なんかありがとう」




「そウか。では【導き使徒】のラーナ、たノんだぞ」




「はぃな!リエイのことはお任せください」




この猫名前あったのかよ!そりゃそうだよな、名前が無ければ俺が【クソ猫】って命名してやったところだよ。ラーナっていうのか。パンに塗るやつのソフトなのかなって一字違いじゃ、って何心の中でボケて突っ込んでいるんだ俺は。




「リエイ?戻ろう?」




「お、おう」




先程の場所に戻ると無事に変身は解除出来てホッとした。いやー流石に幼女の格好でスモッグから煙草とライター出して吸い始めたら、そこら中や見えないところから怒られそうな気がしてたんだよな。とりあえずは帰るかな。




「んじゃぁなー」




「リエイ?アタシも行くんだけれど」




「へ?お前も帰るんだろ?それに俺にはナオって言う名前がちゃんとあるんだよ」




「そう。ナオ、アタシはアナタの家に行くに決まってるじゃん」




「いやいや、猫は猫らしく外に居なさいな」




「行くって言ったら行くの!」




「わかったわかった。飯食ったら帰れよ」




「そうじゃなくて住むの!何の為の【導きの使徒】だと思ってるの!」



決局ウチに連れていくことになった。いやさ、嫁さんと離婚して一軒家に一人暮らしだから部屋は空いているんだけれどさ。あ!猫を飼っていたからケージに押し込めばいいか!




「ん、着いたぞ。ここな」




「へー、孤独な中年男性だからアパートかと思ったよ」




「なんかその言い方ムカつく。……まあ、入れ」




とりあえず入れたはいいが、こいつノミとか平気か?洗面所にブチ込んで洗うべきかどうかと悩んでいたら勝手にリビングに行きやがった。




「すっごーい!広いリビングだね!」




「ちょ、お前!脚も洗わずに!」




「ラーナって名前があるんだからお前とか呼ばないで。脚ぐらい自分で洗えるから平気。洗面所はそこね、借りるよ」



トコトコトコと歩いて行った。自分の事は自分で出来るのは褒めてやろう。俺は自分の椅子に座ってようやく一服ができて安堵した。やがてトタトタトタと音がして



「洗ったよーお腹空いたー」



って入ってきたのは猫じゃなくて全裸の幼女だった。俺はタバコの煙が変なところに入って盛大にむせた。




「グェホッゲホッグェェホッ!どちら様?なんで?」




「何言っているの?ラーナだよっ♪」




目の前のどこを見ても目に毒なモノから目を逸らして、洗面所にある元嫁が使ってたピンクのガウンを引っ張り出して慌てて着せた。




「何かブカブカだねー」




「とりあえず安全ピンで袖とか纏めておくからな。着れる服はここには無いからなんとかする」




「ねえねえ、ご飯は?」




「この時間に食べたら太るぞ、って子猫だったな。ミルクか?カリカリか?それとも缶詰めか?」




「こっちが本当の姿で猫は外での格好なんだよ!普通のご飯でいいよ」




ここで疑問が一つ。なら、ラーナは俺と出会う前に飯はどうしてたのかが気になった。ゴミ漁り?知らないオジサンにゲフンゲフン?窃盗?




「んじゃ、俺に会うまで飯はどうしてだんだ?」




「それはその…………」




「ほほぅ、識らないオジサンを誑かして「するかぁ!」」




「なら、猫の姿で魚屋で魚を「食えるか!」」




「じゃあ?」



「うぅぅ。…………みを…………てました。」




「んんん?聞こえんぬぅぁあ?」




「ゴミを……ゴミ箱を漁ってました!それにの子猫の姿で小学生に給食の残りを頂いてましたぁっ!」




「お、おう。ラーナも大変だったんだな。」




さずがにベソかいたので可哀想になったので炊飯器に残っているご飯を見て冷蔵庫から作り置きのカレーが入った鍋をコンロに置いて火をかけて、出来たカレーを食べさせることにした。




「カレーは大好きだよっ!ナオって料理出来るんだね。」




ラーナが座っているのは元嫁の椅子でクッションを乗せて座らせている。ちょうどテーブル越しに対面になる位置だ。これは俺が夫婦であった時の形のままだったのだが。




「アタシ、ニンジン苦手だけれど甘くて美味しいよ!」




口の周りを汚して食べているのは幼女の特権だな。俺はラーナの口を拭いてやりながら食事を見守って今後の事を考えていた。



────────────────────




【次回マジガル・ウォーは】




「アタシはナオの側にいるからねっ」



「人がこんなにも死んでいるじゃないか!」



「私はトリック。魔法少女トリック」




変身しないと世界は救えない!!

お読み頂き誠に有難う御座います。



誤字脱字や感想等をお待ちしております。



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