魔王侵略偏後編
扉を開けた先に待っていたのはいつもの光景だった。
俺は本を手に取ると悪魔召喚を開始する。魔力の嵐が吹き荒れ、そこから最後の悪魔が現れた。
「ごきげんよう。我が主。私は━━━」
ゴッン
とりあえず一発殴っといた。さっきの怨みだ。
「なにするんですか宗時様~」
「それはこっちの台詞じゃボケ!なんて夢見せるんだ」
「あれは、試練ですので」
「・・・わかった」
「ご理解いただき感謝いたします」
「とりあえずもう一発殴らせろ」
「なんでですか~、わかったっておっしゃったじゃないですか」
「そうだ、言ったさ。お前が反省していないことがわかった。とな」
そういってもう一発殴ったところでやめた。
「で、名前」
「は、はい。私は7つの大罪色欲の王アスモデウスでございます」
「そうか、じゃあな。変態に付き合ってる余裕はないんだわ」
いつにもなく酷いことを連発する宗時、それだけ頭に来ていたのだ。
「待ってください、こうみえて私結構博識なんですよ」
「ほう、エロいごとについてか」
「それもそうですけど、今暴れてる魔王についても」
俺達は出ていこうとしていた足をピタリと止めた。
「なんだと、説明しろ」
「はい、私達7つの大罪の悪魔をはじめとしたこの世界の悪魔は決して人間を襲いません。もし滅ぼせば糧を失うからです」
「糧とはなんだ」
「私達の糧は人の恐怖です。一度侵略を始めればそのときは沢山の食べることが出来るでしょう。
しかし今のように消してしまうとやがてこの世界から恐怖がなくなってしまいます。
それは私達の死と同義だからです」
つまりは今のままあの魔王に好き勝手されるのは彼等も困るという訳だ。
「他には何を知ってる」
「はい、あの魔王はこの世界の者ではないこと、そして元々は人間であったということです。
さしずめこの世界と対になるところからやって来たのでしょう」
「まさか人間は悪魔になりうるというのか」
「はい、今宗時様のなさろうとしていることがです」
「どうゆうことだ」
「それは我々が封印されていた本、これは7つそろうと一冊の本となります。その中に書いてあると言われる心魔一体の奥義を使用することで、更なる力を得ようとしているのです。
またこれは悪魔の力を得るという事であり、一歩間違えば精神を蝕まれて完全な悪魔となってしまうのです」
ようは降霊術の強化版のようなものってことだ。負ければ乗っ取られるし。勝てば強くなる。そんなもんだろ。
「わかった。時間がない。聞きたいことは山ほどあるがまた後にする。早速取りかかってくれ」
「承知しました。では━━━」
こうして俺は一冊の本《知識》を手にいれた。そして心魔一体の儀式についてかかれている場所を読んで開始した。
7つの大罪それぞれの王が手を取り合い1つの環となる。そしてその中心に宗時がたった。そのまま書いてある通りの詠唱をする。普段は悪魔なので詠唱をせずに全ての魔法を使えるが、今回のはかなり特殊なうえ更にアレンジを加えたようなので、詠唱をしえいるのだ。
召喚のときと同じように悪魔達から魔力の嵐が起こる。しかしそれは徐々に中央へと集まって行きやがて大きな渦となり環の中心に現れた。その魔力が少しづつ宗時の中に入っていく。
俺は体に入ってくる魔力を心地よく感じていた。そしてわかるのだ。徐々に体の造りが変わっていくのが。
暫くして儀式が無事終了する。
「宗時さん、大丈夫ですか」
「ああ心地いいくらいだ」
「それは良かった」
そういって力なく倒れそうになるスクリナを支える。相当心配して気を張っていたのだろう。そのまま俺の腕のなかで可愛い寝息をたて始めてしまった。
「おめでとうございます宗時さん」
「おめでとうよ宗時」
「ありがとう。二人とも。皆もわざわざ俺のためにアレンジを加えてくれてありがとう。おかげで無事成功したみたいだ」
皆にお礼を言うと頷いたり、喜んだりと皆色々だ。俺は今のでどう変化したのか体を確認してみた。
どうやら本当に半魔状態のようだ。力を入れると筋力と魔力が増したことがわかった。
《恐化》という固有魔法のようなものにも目覚めたのだが、なぜかもともと持っていたかのように能力の事がわかるのだ。これが固有魔法というものなのだろうか。
俺達は《転移魔法》を使いカムサ帝国王宮に戻るとスクリナを一番信用しているレヴィアタンに預けてラスノマのところへ行った。
「陛下今戻りました」
「ご苦労だった。で、力は手に入ったか」
「はい!」
「そうか、それは良かった。本来ならばしっかりと休んでから行ってくれと言いたいところなのだが、もう既に敵は目の前まで迫っている。
直ぐにでも準備して出発して欲しい。
帝都南の砦で騎士が待っている。行ってくれ」
「わかりました。ですが騎士は足手まといなので我々のみで行きます」
そうして俺は外に出ると皆の待っている場所に戻った。
「やはり既に敵は目の前まで迫っているみたいです。そこで直ぐにでも出発して欲しいとの事です」
「そうですよね、それで騎士達はどこに」
「いないですよ」
「は?」
「奴等の餌食になるだけなので断ってきました」
俺がそういうと、初めてロゼフがなにやってんだというような抗議の目を向けてきた。
俺はそれをスルーすると、ダァトに書いてあった武器を呼ぶ事にした。
《セフィロト》
そう呟くとどこからともなく、俺の回りに10個の装備が召喚された。どうやらそのとき発生した光で起きたらしいスクリナが目をぱちくりさせて聞いてきた。
「なにこれ・・・」
「ん、遂に宗時が神になったんだよ」
「そっか」
マックの言葉を直ぐに信じてしまったスクリナと、その元凶であるマック、ロゼフにも説明する。
「これはセフィロトって武具です」
俺はそれだけいうと一人づつにその装備を手渡した。これはそれぞれに能力が付与されている特殊な物で、一つ一つに大天使の名前が刻まれている。悪魔にこれを渡していうのか悩むがまぁ問題はないだろう。
スクリナは王国、サンダルフォン(剣)だ。
能力は《最強の盾》
マックは慈悲、ザドキエル(槍)だ。
能力は《癒しの光で》
ロゼフは理解、ザフキエル(剣)だ。
能力は《無へと返す剣》
マモンは基礎、ガブリエル(鎧)だ。
能力は《カーディナル》
サタンは王冠、メタトロン(腕輪)だ。
能力は《イージス》》
レヴィアタンは美、ミカエル(髪飾り)だ。
能力は《魔力強化》
ベルゼバブブは栄光、ラファエル(鎧)だ。
能力は《神の意向》
ルシュフェルは勝利、ハニエル(チョーカー)だ。
能力は《軍隊強化》
アスモデウスは知恵、ラジエル(本)だ。
能力は《全知全能》
そしてベルフェゴールは峻厳、カマエル(靴)だ。
能力は《ギルティ》
以上が名前と意味、そして能力の名前だ。ちなみにダァトはセフィロトの上位武具でこれらの武具が天使ならダァトは神とも呼べるものだ。
「よし、皆、魔王を倒しに行こう。
スクリナ、生きて帰ったら一緒にデートしよう」
「はい!」
スクリナが頬を朱に染めてもじもじしているところへツッコミが入った。
「いやお前らそれ死フラだから」
「はい、死にましたね」
この世界にもフラグはあったんだな。まぁそれはいいとして、とりあえず俺は皆を連れて南の砦へ行った。
「おお!勇者が来たぞ!!」
「「「「「「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」」」」」」
俺達が着くと直ぐに歓声が上がった。なぜかそれをマモンが制するとなにやら話始めた。
「聞け皆のもの。我らは7つの大罪の王である」
マモンのその宣言で動揺とざわめきが起こった。
「しかし!我々は宗時様に破れ下部となった。我々は宗時様を害そうとするものに決して容赦しない。しかし宗時様の為動こうとするものには最大の敬意と手助けをしよう」
「「「「「「うぉぉぉぉ!!」」」」」」
すごい歓声が起こった。なにも倒したわけではないのだが・・・。まぁなんか指揮があがっているしいいだろう。連れてかないが。
「そこでだ、宗時様は誰一人傷つくことを許容しない。奴等は我々が倒してこよう。そなた達はここで待ち宗時様の勇姿を後世に伝える為努力せよ」
さすが悪魔、ものすごく上手に彼らをいいくるめてしまった。
まぁ結果的にはいい方向へ行ったからいいのだが。
「宗時様、これでよろしいでしょうか」
「ああ、ありがとう」
マモンは恭しくお辞儀をすると下がって行った。
空と地上には黒いものがうじゃうじゃと近づいて来ているのがわかった。
さらには徐々にとても濃い質のいいプレッシャーを放つ者も近づいて来ており魔王があの中に居ることを確信させた。
「さあ戦闘開始だ!」
その声と同じにマモン達は召喚の魔法を使い各々の配下の者を沢山の召喚していった。
俺も《煉魔》、《氷王》、《風神》、《雷神》、《ライトニングドラゴン》》、《ファイアードラゴン》を発動した。
宗時の発動した魔法は悪魔の大群を空から焼き、凍てつかせ倒して行く。この攻撃だけで5分の1は削れただろうか、しかしまだ目測でも10000はいる。
「おっしゃ~やったるぜ~」
マックがそう言いながら翔て行く。一刺し、二刺しと突いていく。既にその一撃は人間のそれではなかった。知らず知らずのうちにマックも強くなっていたのだ。槍を一振りするだけで突風が起こり回りの敵を蹴散らす。
それに続いてロゼフも突き、薙ぎ、蹴散らしていく。既にロゼフも、いや、二人に限らない。四人全員がものすごくレベルアップしていた。
「ば、化け物め」
「どっちが化けもんだよっ!」
悪魔達が顔に恐怖を浮かべて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。そこに統率するものはおらずただ刈られるだけだった。
「うん、順調だな」
「はい、セフィロトの支援系能力も問題なく発動しているようで、雑魚共は間もなく殲滅できるかと」
マモンの予測を聞きながら魔法を連発する俺、その頃悪魔達はというと━━━
「・・|━
「その程度の力で主さまを害そうとは、寝言は寝て言えですわ」
レヴィアタンはそう言うと得意の水魔法を使って敵を窒息しさせていく。一滴も血を流さずき仕留めていくさまは美しくすらあった。
「おお!今日の運は最高のようだ、まさかこんな美しい方にお会い出来るとは」
そういいながらやって来たのはタキシードに身を包んだアスモデウスのような顔の悪魔だった。
「私、ルクスリアと申します麗しの君」
「キモいですねっ、私の身も心も余すとこなく全て主さまの物なんですわよ!」
レヴィアタンはそういいながら《水弾》を連発する。しかしルクスリアという奴はいとも簡単にまるでステップを踏むかのようによける。
レヴィアタンは《水弾》を連発するとそれにあわせてルクスリアに肉薄する。そのまま女性とは思えない速度で蹴り殴る。それをまたもや舞うように避けるルクスリア、そこから反撃とばかりにルクスリアも魔法を交えながら殴り、蹴る。
二人とも踊るように避け、攻撃する。またそれが、空で行われるものだから端から見ればまるで妖精が踊っているように見えることだろう。
「中々やるじゃないですの、色欲の王を名乗るだけはありますね。少し見直しましたわ」
「お褒めに預り光栄でございます麗しの君、そのまま惚れてくれてもいいのですよ」
「何度も言いますがそれはないですわっ!」
レヴィアタンはそう言いきると一旦距離をとると自身の使える最高威力の魔法の準備を始めた。
もちろんその間もルクスリアは攻撃を仕掛けてくる。しかしその全てをハラハラと蝶のように舞いながら避ける。
そうして完成した魔法は《水槍》相手を刺さるもしくは、切り裂くとそこから水が入り体内で爆発する。これはより長く槍と接触するほど威力が増す。
レヴィアタンはこれを手でもちしっかりと脇で支えると一気に加速、ルクスリアに向けて刺し出した。
しかしそれを寸前のところでルクスリアは避けて見せる。
「残念でしたね、どうやらそれは麗しの君こ最高の魔法とみたが当たらなければ意味はない」
「ふっ、いや当たりましたわよ」
そう、ルクスリアは完全に避けきることはできず腕に少しの切り傷ができていた。腕を吹き飛ばす位ならこれで十分だ。
レヴィアタンが指を鳴らすと切り傷の付いた右腕が爆発した。
「アァァァァ!!」
さすがにこれは予想できなかったらしい、全身から汗を吹き出しながら必死に痛みを堪える。
しかし彼も悪魔だ。痛みはあるが直ぐに再生できる。けれども腕の一本と言えども再生させるのには相当の魔力が必要だ。
「少々私の方もあなたの実力を見誤っていたようだ。ただ美しいだけではなかったようですね」
「美しいバラにはトゲがあるのですよ、まぁ主さま以外にですが」
その声が再び開始の合図となる。
今度はルクスリアから仕掛けようとしてきた。しかしあらかじめ仕掛けられていた《インヴィジブル》をかけられたた《バブルマイン》が発動し、全身を爆発と爆風に包まれる。霧が晴れるとそこからは笑顔だが全身傷だらけのルクスリアが出てきた。
「おい小娘よくもやってくれたな」
「はっ、それがあなたの正体?醜いわね」
ルクスリアは傷だらけではあったがさっきまでとは全く違う姿をしていた。そう例えるなら鬼、のような。
「まさかこの姿になるはめになるとはね」
「あらそちらの姿の方がお似合いですわよ」
「よしてくれ、こんな醜い姿。いまにも恥ずかしくて死んでしまいそうだ」
「それは良かったですわ、死んでくださる?」
そんな会話の最中もレヴィアタンはジリジリと距離をとった。ヤバイのだ。あの姿になった瞬間からあふれでるプレッシャーとその密度が半端ではない。
「この姿を見られたからには生かしておけない、すまない麗しの君。死んでくれ」
そう言うとルクスリアが消えた。いや、消えたように見えたのだ。レヴィアタンは反射的に左によける。しかし完全ではなかった。さっきまでいた場所を影が通ったかと思うと右脇腹がえぐられていた。
「くはっ!」
レヴィアタンはえぐられた場所に手をやると直ぐに再生させる。しかし再生させたそばから次々と新にえぐられ、もがれる。度重なる再生によりレヴィアタンの魔力は限界に近づいていた。
「避けないでくださいよ。せめてもと一瞬で死ねる場所を狙っているのに」
「嫌ですわね。私の死も生も、主さまのもの。許可がない今このような場所で死ねませんわ」
そう言うとありったけの魔力を使って《バブルマイン》を自分の周りに展開した。これで攻撃してこればルクスリアも必ずダメージを受ける。そして必ず━━━
「あなたは私を道ずれにしようというのですか」
「そんなまさか、私があなたと心中などごめんですわ」
「じゃあ死ぬのはあなた一人だ。わからないわけないですよね、魔力を失うという意味を」
「当たり前ですわ」
魔力を失う、それは死を意味する。皆、生きている限り呼吸をするのと同じように魔力も体外へ出し、それよりよも多く吸収する。そしてその魔力の吸収量が年を追うごとに出す量よりも少なくなっていく。それが死へと繋がるのだ。
つまり魔法を使うというのは命を削っているのと同義なのである。
「しかし私の計画通りあなたは足を止めた。止まっている物にならどんなに下手でも当てられますわ」
そう言うと自身の周りに展開した《バブルマイン》をルクスリアの周りに移動させた。そして同じに当てる。
何層もの《バブルマイン》はルクスリアに当たって爆発したものが次の層に衝撃を加えて爆発する。そうしてこれは一種の巨大な爆弾と化したのだ。
「バカな・・・」
霧の中から出てきたのは足と腕、胴体のほとんどを失ったルクスリアだった。
「しかし、残念でしたね。どうやら今の攻撃であなたの魔力は尽きたようだ。さようなら麗しの君」
そう言いながら再生させると帰ろうとするルクスリア、彼自身も既に再生の多用で魔力は底を尽きかけていたのだ。
しかし、異常なことに気がつく。魔素、魔力の元となる物質か後方の竜巻に吸い寄せられるように集まって来ているのだ。
「ええ、ほんとうにさようならですわ」
魔素の集まる方に目をやるとなんとそこにはレヴィアタンがいたのだ。しかもルクスリアと戦闘を始める前よりも明らかに魔力の量が増えた状態でだ。
「な、何が起こったのだ」
「それをあなたに教える必要があるのですか、今から死ぬあなたに━━━」
瞬間ルクスリアの頭部が爆発した。いや、正確には握り潰されたというべきか、レヴィアタンがさっきのルクスリアを遥かに上回るもはや瞬間移動とも呼べる速度で攻撃したのだ。
悪魔はどんなに肉体を欠損しても瞬時に再生させられる。しかし、頭部はそれには当てはまらない。ゆえにもうルクスリアは再生する事はなく、力なく体だけが地へ落ちていった。
「あ~あ、せっかくのお召し物が台無しではないですの。それに加護も使ってしまいましたし、一旦主さまのところへ戻りましょうかね」
そう言うとレヴィアタンは全身を水で包み帰り血の付いた服を別の物に取り替えると宗時の元へと向かって行った。
レヴィアタンが宗時の元へ向かい始めた頃、時を同じくして魔王直属の下部と思える者を倒してきた他の悪魔達も宗時の元へと向かっていた。
||※||
「報告いたします。敵の幹部と思しき数名を倒しました。どうか次のご指示を」
マモンが代表して報告をする。どうやら揉めたらしいが、最初に召喚された者になったらしい。
そして宗時も魔法で敵の数をおよそ100まで減らすことに成功していた。
「よし、魔王を叩きに行く」
そう言うと宗時達はスクリナ達を連れて魔王がいると思える場所へ飛んで行った。
暫く飛んでいると一際濃いプレッシャーを放っている奴が見えてきた。おそらく奴が魔王だろう、そこで足を止める。
「あなたが魔王ですか」
「そうだ、よくもまぁ俺の幹部を倒せたものだ。どうだ、俺の元につく気はないか。女でも金でも好きなものをやろう」
「は、誰がそんなテンプレ通りのことをいうアホにつくかよ」
「そうか、そうか、なら━━━死ねっ!」
さすがは魔王と言ったところか、ものすごいプレッシャーだ。以前の俺達なら死んでいただろう。以前の俺達ならな。
「宗時様あれは我々がやります。どうぞ後ろでお待ち下さい」
「いや、いい。お前達では勝てない。そこら辺に残っている雑魚を倒してくれ」
「「「「「「「了解しました(ですわ)!」」」」」」」
そう言うと魔王までの道を開くように目の前の悪魔を倒していく。
宗時はその道に沿うように《ライトニングドラゴン》を発動し先制攻撃にでた。
しかし、そんなものが効くわけもなく、魔王は無傷で突き抜けてくると遥か空高くに舞い上がりそこからは魔力の塊を撃ち落としてくる。それを宗時は避けなが魔王へと接近し斬りかかる。と、見せかけて背後へ回ると足から協力な振動を放ちながら背中に蹴りを入れた。魔王はその攻撃を受けて、地上へと落下し、後には大きなクレーターを作った。
宗時は蹴ると直ぐに重力に任せて落下し、魔王に剣を突き立てる。しかしそれを体制を立て直した魔王は手を掲げるとそこから障壁を展開し防御する。
「思ったよりやるじゃないか。私も少しばかり本気を出そうか」
魔王のそんなテンプレ発言に反応することなく宗時は全力で袈裟懸けに入る。それを今度は空中に離脱して避ける魔王は雷の魔法を放つ。
宗時はそれをバックステップで避けると足に力を込めて跳躍するそして放つ。宗時流剣術《風雅》、剣に纏わせた風を付と同じに相手に放つ技だ。そのまま跳躍のスピードを殺すことなくさらに加速すると魔王に肉薄しアーサーの技《竜骨斬》を使う。魔王はこれらの攻撃を全てを自身の周りに出現させた岩をぶつける事で相殺して見せた。
「やっぱりそう簡単にはいかないか」
そう一人ごちると宗時は早くも一枚目の切り札を使うことにした。
《ダァト》
その切り札がこれ、《ダァト》だ。これは本であるが、それと同じにセフィロトの武器でもある。
宗時がそういうと同じにダァトが出現し発光する。そしてそれは甲冑と一振りの刀となって宗時の体に一瞬で装備された。さながら戦国武将である。
セフィロトの武器の能力は《身体強化》と《メモリーメイク》なのである。宗時は刀を鞘から抜くと両の手で眼前に構えると空中で踏み込みさらにスピードをあげて肉薄する。
「なんだこの程度か」
魔王はそう呟くと強化した宗時を上回るスピードで移動すると、宗時を囲うように全方位から極太の雷を放つ。
その攻撃を宗時は《イージス》を発動して防ぐ。そしてさらに自身でも《身体強化》を発動する。そして高速で移動し無数の残像を作り出す。そして魔王を何体かの残像が攻撃を入れることに成功した。しかし魔王も悪魔だ、直ぐに再生してみせる。
「この程度の攻撃いくら受けようが痛くもない。次でお前を殺してやろう」
「それはどうかな━━━」
よく見ると宗時の刀には血ではなく、水が滴っていた。
そして次の瞬間攻撃の当たった場所が爆発する。そうレヴィアタンの《水槍》だ。これを宗時は刀に纏わせて自身の技《水刀》として使ったのだ。
さすがにこれは効いたのだろう、魔王は距離をとると一瞬で再生し一際大きな魔力を集め始めた。
「死ねっ!!」
そういうと黒く禍々しいそれはゆっくりと落ちてくる。普通なら避けられるスピードだろう、それが普通なら。
そう、それは普通ではなかった。空高くにいる魔王から放たれたそれは宗時達の視界をまだ数百メートルある位置か黒一色で染め上げた。
「全員ができる限り俺から離れろ!!!!!」
宗時は全力でそう叫ぶと既に見えない魔王を無視して魔法を用意し始めた。
全員が数十キロ離れたのを確認すると宗時はそれを発動する。
《魔獄》
これは全ての放出されている魔力を吸収し自身に取り込んで力とする魔法だ。しかし、強力過ぎるゆえ仲間の魔法の魔力を吸収するのみならず体内の魔力まで吸い取ってしまう恐れがあるのだ。宗時はそれを発動すると更に強力な魔法を使うために詠唱を開始した。
《天が裂ける。大地が泣き叫ぶ。大気は震えた。天より光が降り注ぐ。神の救済だ。天使がラッパを吹き鳴らす。さあ終焉のときは来た。生きとし生けるもの全ては等しく死を迎える。魂は円環の理を外れさまよい。そこに救済はなし。あああれは神ではなかった。我らが命既にそこに無し。さあ行こうぞ円環の理の外へ》
《魔獄》が全ての魔力を吸収し終えると同じにそれは発動した。
《死の賛歌》
それは全てを飲み込んで塵へと返した。地上にあった木も草花もなくなり、《魔獄》からかろうじで生き残った悪魔達も塵となり空には粉が舞った。
俺は《死の賛歌》で失った多くの魔力を《魔獄》を取り込んで万全の状態まで回復させる。
空高くを見上げる。そこには首より上だけとなった魔王の姿があった。宗時は追撃を加えんと魔王に迫る。しかし魔王の首から下がブクブクとし始めると間合いに入る寸前で再生した。かと思うと溶けた・・・
俺は魔王だった物に《煉魔》を発動する。一瞬でそれは燃え上がると灰となって落ちていく。しかし突如後頭部の後ろに現れた殺気に身を屈んで避ける。そうしてそのまま地上へと落下する。
するとさっきまで宗時がいた場所に魔王が現れた。
「よくもやってくれたな━━━」
様子がおかしい、俺は刀を剣に持ち帰ると魔王に肉薄し心臓の辺りを斬る。
そこには実際の傷はない。しかし確かに何かを斬った。
魔王に向かい合って剣を構える。すると魔王が涙を流したのだ。そして小さいながらも言葉を紡ぐ。
「あ・り・が・と・う」
宗時は剣をおろす。
「自分をしっかりもて、力に溺れるな。心の弱さは悪魔に付け入らせる隙となる」
「ああ、ありがとうございます。肝に命じます」
俺はそう返事をすると魔王だったものが笑ったかと思うも落ちていった。
そうして向き直る。
「なぜ手を出さなかった」
「何、無粋な真似はしないさ。いくら魔王だろうとな」
「お前はなんだ」
「魔王だ。それ以上でもそれ以下でもない」
「そうか・・・」
それだけ言うと俺は《魔獄》を発動する。すると魔王は吸い込まれる。そして俺がそれを取り込んで戦いは終わった
最後まで読んでいただきありがとうございました。
魔王侵略編、どうだったでしょうか。私自身あの終わり方はしっくり来ていません。しかしあのまま戦うと魔王に勝てなくなってしまうのと今後のお話に支障を来すのでこうなりました。
さて次回予告です。
次回、建国編。遂に宗時が王様!?世界を救った勇者の運命は。
更に魔王の復活!?
果たして平和な日常はいつまで続くのだろうか
ではでは次回の投稿もお楽しみに!