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戦慄のステイシア  作者: 896
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3

1日の仕事を終え、部屋に戻る。フカフカのベッドにダーイブだぜ!


「レオっちぃ〜。今日、魔法士団に新しい班長が来たんだって?」


俺が気持ちよく枕に顔を埋めていると、ルームメイトのキース・トゥインクルが声を掛けてきた。

俺達聖霊士団は、二人一部屋で寮生活となっている。

真ん中には4人で利用できるサイズの机が置かれ、その両脇にはベッドが設置されている。カーテンで仕切ることができるので、お互いの消灯時間が違っていても眩しくて眠るのに困るということはない。

基本がチームプレイの聖霊士団にとって、仲間との連携を強化する為の目的もあるらしい。


「あぁ、魔獣討伐隊のな。なんでも今回の班長は女らしいぜ。聖霊達も興味深々だった」


「へぇ!珍しいじゃん!よりによって、聖霊が魔法士団に興味を持つなんて!で、どんな班長だったの?」


キラキラと興味あり気な顔で俺を見つめてくる。キースは俺より年上のくせに童顔だ。クリクリっとした黄緑色の瞳に、ダークグリーンのおかっぱ髪がさらに幼さを加速させる。そんな容姿のくせに、女性への気遣いができるというギャップが、女心をくすぐるらしく、ヒジョ〜にモテる。その癖、名前がトゥインクルだぞ⁉︎本名なのかと疑いたくなる可愛らしい名前すら持っている。

聖霊士のくせに、なんと生意気な!

しかもこいつはしょっちゅう女を部屋へ連れ込む。仕切りのカーテンがあったって、プライバシーも何もあったもんじゃない。


対して俺は、金糸が一房混じった天然パーマの茶髪を持つ、茶眼の普通顏。個人的には半眼の割に大きな目がセクシーだと思っていたが、周りからはギョロ目で気持ち悪い、もしくは常に眠た気でやる気がないように見えると評判が良くない。くそっ!…やる気がないのは事実だがな。


「俺は興味がなくて、見てない。どうせいつか見るだろ」


「えぇぇ〜!つまんないつまんないっ!普通、見に行くでしょ!僕、これから見に行っちゃお〜!レオっちも行く?」


俺が見たって見てなくったって、ウィルは見に行くだろうに、こうやってすぐにわざとらしい反応をする。…これがモテテクなのか?


「いや、俺は嫌でも顔合わせするだろうから、部屋で筋トレしてるわ」


「そっかぁ。レオっちは今、魔法士団専任だから、いつでも見れるもんね!じゃ、僕は見てくるね〜」


…といった30分後、キースは複雑な顔をして戻ってきた。そしてそのまま机に突っ伏してしまった。キースの周りの聖霊が心配そうに群がる。


「おいおい、せっかく見に行ったってのに、なんだその顔は。そんなに不細工だったのか?」


俺の言葉に対して、顔を上げたキースは口をとんがらせて首を振った。


「不細工ではないよ、とっても綺麗だった。ただ…不気味だった」


「不気味?」


思いも掛けない単語が出てきたことに驚き、俺は勤しんでいた筋トレをやめて起き上がり、机に腰掛けた。


「レオっちも知ってるでしょ?聖霊達の、魔法士への接し方…」


「あぁ。そりゃぁ、しょっちゅう見てるからな。あいつら全く興味を示さないもんな。おかげで魔法士はツイてないヤツらばっかで、本っ当に同情しちまうからな」


「そう。僕もそうだと思ってたの。でも、件の彼女は、聖霊に嫌われてて…」


「はぁ⁈嫌われてるって⁉︎聖霊達はそもそも魔法士に対して好き嫌いの感情なんて持ち合わせてないだろ!」


俺は思わず身を乗り出してしまった。

魔法士団は、その名の通り、魔法が使える集団だ。聖霊士団同様、その力を使えるのは極一部の人間に限られているが、『忌み子』として蔑まれている。


魔法士は、本来聖霊に請わなければ使えない火や水といった力を利用することができる便利なやつらだ。

この能力は、生を授かった時に、たまたま聖霊を身体に取り込んでしまった為と言われている。

その為なのか、魔法士は聖霊から見ると同等の生き物と捉えられているようで、全く相手にされない。聖霊は、聖霊同士で干渉しあわないからだ。その為、やつらは聖霊の恩恵を受けられない。

しかも、不運なことに、魔法士は一種類の魔法しか使えない。例えば、水の魔法士は、料理を作ろうにも水しか出せないので、食器洗いや飲料水には困らないだろうが、火を起こせない。その為、魔法士以外の人間または魔法石に火を起こしてもらわないと、温かい料理を食べることができないのだ。

その上、聖霊が寄り付かないせいで、魔法士の奴らは本当にツイてない。しょっちゅうコケたり、ドブにはまっている。さらにイジメの対象にもなりやすく、必然的に魔法士団の性格は根暗で陰険になる。…本当、気の毒だ。


しかし、聖霊は決して魔法士を嫌うようなことはない。


「…そいつと組まされるチームは気の毒だな。そんな気味悪いやつ、絶対に遠慮だぜ」


俺は思わず眉間に皺を寄せた。

魔法士はとにかく運が悪いが、魔法に関しては他を一線する程の攻撃力ーー兵士の10倍以上とも言われるーーを有している。そのため、戦ともなれば、彼らは必ず召集される。


もちろんその時、聖霊士や兵士も召集される。隊長・副隊長クラスや衛生兵・通信兵を除く兵士約10人に対して、聖霊士は1人つく。しかし、魔法士は約5人に対し1人と、おおよそ決まっている。

当たり前だが、魔法士に割り当てられた聖霊士は最悪だ。あいつらはすぐに怪我をするし、攻撃は直撃するし、生きた心地がしない。まぁ、俺らは怪我しないんだけどな。もう1人位、魔法士につく聖霊士を増やしてくれたら、安全に戦えそうなものだ。が、現状戦場で活躍できる程の聖霊士は少ないので、なかなか難しい。


「本当だよね。でも、案外レオが割り当てられるんじゃない?君、この国始まって以来の聖霊し士として名高いじゃないか。彼女も相当な使い手らしいし…」


「不吉なこと言うなよ!単純に俺に付いてる聖霊数が多いってだけだろうが。第一、俺は前回の討伐隊に出てるからな。次は休みが回ってくる番だろうが」


「ま、もし割り当てられても、美人だったしある意味ラッキーなんじゃない?

じゃ、僕はまた遊びに行ってくるね〜おやすみ!」


言いたいことだけを言って、スッキリした様子のキースは、笑顔で部屋を出て行ってしまった。


「あいつ…本当にいらん情報を…!」


俺が胃を痛める一方で、聖霊達は俺が苦しむ様子を喜んで見ていた。ムカつく奴らだぜ…




***




ーーそれでも朝は来る。


「〜っ!目覚めが悪過ぎる」


隣のベットで寝ているキースを、蹴り飛ばしてやりたい気分だぜ!だがしかし!俺はそんなことはしない…優しいからな!


今日は月末ということもあり、今朝の聖声はウィル士団長だ。その後、団のミーティングが開かれるので、今日は全員強制参加だ。


(次の戦の割り振りについて、絶対話すよなぁ〜)


思わず溜息が漏れる。


「おぃっ!キース!今朝はミーティングあるんだから、全員参加だろ!さっさと起きやがれ!」


ドガッと思いっきりベットを蹴ったのに、キースの野郎は起きない。悔しくてもう一度蹴る。が、しかし。俺の足は虚しくもキースのベットを空振りして終わった。


なんだなんだと集まっていた聖霊達は、俺の見事なまでの外しっぷりにそりゃぁ見事に大笑い。中には俺の空振りのキックを真似してコントを始める輩まで現れた。


「お前らぁぁ!捕まえて痛ぶってくれるわぁっ!!」


俺と遊べると勘違いした聖霊達は大喜び。その満面の笑みを崩してくれるわっ!

…と、全力で追いかけるものの、すばしっこいあいつらのことだ。


「お、おい。俺は寝起きなんだぞ。ちっとは手加減しろよ…」


ゼィゼィと朝から息を上げ、白旗を揚げる。それほど運動神経が悪い俺ではないが、相手が悪すぎる。

そんな俺のグッタリした姿を見て、指を高々と上げ、一等賞のポーズをする輩がいて、本当にイラついたが、もう俺にはあいつらをシバいてやるだけの気力が残っていなかった。


「朝から聖霊達と遊んであげるなんて、レオっちは本当に優しいね。だからあんなに聖霊達から好かれるのかな?」


いつの間にか、俺の横で支度を終えたキースが立っていた。さっきまで寝てたのに、なんて所業だ…


「さ、レオっち、行こっ!ミーティングに遅れたら、怖〜〜いゼインにまた因縁つけられちゃうよ」


可愛くウインクしながら脅してくるお前は小悪魔か。いや、悪魔だったな。

はぁとため息を着き、立ち上がった俺もさっと着替え、ミーティングへと向かった。

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