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戦慄のステイシア  作者: 896
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(あんなの、ただの呪いだってのに……羨ましいならこっちから熨斗をつけて送ってやりたい位だぜ)


今日の俺の仕事は魔法士団の練習場横にある小さな聖堂で1日祈る…というより、過ごすことだ。

そう、俺達『聖霊士』はただそこにいて、適当に祝詞をあげることが仕事だ。


まず、聖霊について話そう。

聖霊は一般人には全く見えない存在だ。それぞれ属性があり、その理を担っている。

故に、聖霊は機嫌が良ければ恩恵をもたらし、損ねれば大災害を引き起こす。本当、面倒な相手だ。

そんな面倒な相手に好かれてしまった集団が俺達『聖霊士団』である。

当たり前だが、聖霊士団に入るやつらは聖霊が見えることは大前提。その上で聖霊に好かれている(・・・・・)ことだ。

なぜ強調したかというと、まぁ、見える位ならどこにでもいる。ただ、好かれるかどうかは別だ。

聖霊に好かれるやつは不運な事から免れるようになる。

例えば、クラスで席替えをすると、嫌いなやつは隣の席にはならなかったり、ババ抜きをするとババが回ってこなかったりする。まぁ、微妙だ。

逆に運が良いかといえば、そうでもない。席替えしても好きな子の隣にはならないし、ババ抜きしても自分の狙ってるカードは回ってこない。自分に利益のある運に関しては人並みなのだ。

ついでに言えば、聖霊士団はなぜだかモテない。まぁ、元々運が悪くないだけであるから、出会いという運の良さに関しても人並みなんだろうか。…これでも給料は良い方なんだがな。


しかし、これが戦ともなれば話は別だ。

基本的に、この世界では魔獣が住み着いている。そいつらはまぁ予想通り、人間を襲うのだ。さらにこの国ーアレクサンドリアーは、広大な国土を持ち、肥沃な大地を持つ。資源も豊富な上に、海に面している為貿易も盛んで、さらに言えば魔獣も少ない国だ。フロートムーバーと呼ばれる、光の力で飛ぶ乗り物が沢山あるほど、この国は潤沢している。他国がこの国を狙わない訳がない。

で、そんな魔獣達を追い払ったり、他国の侵略を防ぐのが、俺達の役目だ。肉弾戦は兵士団や魔法士団が務める。じゃあ俺達聖霊士団は何をするかって?そりゃあ、兵士様や魔法士様達をお守りすることさ。


例えば、聖霊士団は、戦で砲弾をくらっても、傷一つなく生き抜くことができる。聖霊が、気に入った人間を失くさない為に行う過剰防衛だと言われている。そうなると、そいつの近くにいるやつも生存率が自然と高くなる。ゆえに、死傷者や負傷者を大幅に減らすことができる、戦にはまさにもってこいの適材なのだ。


だが、ここでひとつ疑問があるだろう。そう、聖霊士が戦に行くことを嫌がる=聖霊に嫌われてヤバイ!という事はないのかということだ。

これについては、俺の立場から言えばヒジョ〜に残念なことに、そんな事はない。聖霊は、ただその人が好きかどうかだけで、別に嫌がっていてもどうでもいいのだ。むしろ嫌がっている姿に喜ぶドSな聖霊もいるから、困ることこの上ない!

巷では、聖霊に好かれた奴のことを『神の愛し子』なんて言われてるらしいが、『遊び道具(おもちゃ)』の間違いだってーの!

まぁ、世間一般では愛し子に嫌われることは万死に値するレベルのように思われてるのもあって、おかげで誘拐とか殺人とか、物騒な面倒事には巻き込まれないで済んでるんだがな…


しかし、戦う必要はなく、ただ戦地に赴いたり祈ったりすれば良いだけで辛い労働は一切なし。唯一、筋トレして体を鍛え、国民に血税の無駄遣いと言われるような体型にしないという制約のみ。この条件で破格の給料ともなれば、聖霊士になりたがる輩は多いもので。

だが、こればかりは努力でどうこうなるものではない。聖霊に好かれるということは、持って生まれた天性だからだ。

更に言えば、聖霊に好かれていても、その好かれ具合で部署も判別される。くっついてる聖霊数が多くたって、過剰防衛してくれる程聖霊に好かれていなければ戦に行っても意味がない。そう言った奴らは、まぁ事務とかに割り当てられるらしい。

まぁそんな訳で、幸運にも聖霊にとても好かれた俺は、聖霊士として魔法士団の為に祝詞をあげているのだ。


(ったく、アイツ(ゼイン)もいちいち俺に噛みついてる暇があったら仕事しろってんだよ)


さっきのゼインの発言を思い返し、イライラしながら魔法士団の聖堂に着くと、そこには金髪頭の背中が見えた。皺一つない真っ白な制服を着こなす奴と言えばただ一人。


「よう!朝ぶりだな!」


バンッと背中を叩くと、嫌な顔をして振り向くーー予想通り、クリスだ。


「おいおい、朝っぱらからそんな不機嫌な顔をしてると、女の子にも逃げられちゃうぞ〜」


「本っ当に君は嫌な奴ですね」


碧眼が俺を睨みつける。

なんか、クリスが嫌がる顔を見ていたら、朝のイライラも吹っ飛んだぜ!クリス、サンキュー!


「…レオ。今、なんか私をイラつかせる事を考えていたでしょう。君の周りの聖霊達が邪悪な笑みを浮かべてますよ」


「いやいやいや!朝からクリスに会えて、良かったなーと思ってな!喝も入れてあげたし、お前も元気になっただろ!」


クリスが何か言いかけようとしたその時、魔法士団の練習場から騒めきが溢れた。聖霊達もその騒めきが気になるようで、聖堂の窓に我先にと群がっている。


「なんだなんだ?やたらと騒がしいじゃないか」


「レオ、知らないんですか?今日は魔獣討伐隊の魔法士班の班長の赴任日じゃないですか。この前、関係各所に通達もされてましたよ」


クリスの冷たい視線が刺さる。

そういえば、そんな事もあったような…


「だからって、あんなに騒がしいというか、盛り上がる必要はないだろう。魔法士団なんて、入れ替わりが激しいんだから」


この国は、兵士団、魔法士団、聖霊士団に分かれている。その中で、等級を付けられ、上位から選出された人が魔獣討伐隊、地域保安隊、領土守備隊など様々な隊を務める。

全ての隊で、隊長は兵士から選出されるが、魔法士と聖霊士は兵士とは攻撃のスタイルや求められる能力が異なる為、その中で班長が存在する。

今回は、魔獣討伐隊の魔法士班の班長が大怪我をしたとかで、再編せざるを得なかったらしい。


「本当に何も知らないんですね。私も実際に見た訳ではありませんが、女性が班長になるそうで、話題になってるんですよ。見に行きますか?」


そこまで興味はなさ気に誘ってくるクリスに同調し、俺は緩く首を振る。


「どうせいつか会うことになるだろ」


「それもそうですね」


「それより、早く仕事しよーぜ。ほら、聖霊サマ達よぉ〜集まってくれ」


声を掛けると、なんだなんだと興味ありげに聖霊達が俺に群がってくる。しかし、今日はいつもと違った。未だに窓にへばりつき、練習場を見ている聖霊もいたのだ。


(…聖霊が魔法士団に興味を抱くことなんてあるんだな)


俺は少し不思議に思ったが、まぁそんなこともあるだろう位にしか考えていなかった。

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