パレード
連続投稿六話目になります命君がつええするまで続けたいです。
自らの力を確認した翌日の正午、
「皆のもの揃ったな、では出発だ。」
「命はオレに着いてこい!」
ラインハルト獣国はここ防衛都市グラーダから馬車で一週間ほど行ったところにあり、六つの国のなかで一番近い。防衛都市とは魔王の生息する半島の付け根部分に位置し各国で維持をしている街だ。
この大陸は歪な瓢箪を横にしたような形をしており西側の大きい部分に六つの国があり、東側は未だ未開の地となっておりそこに魔王が生息してると考えられる。そしてここ防衛都市グラーダは瓢箪の窪んだ部分にあると考えてもらっていい。
「どうした!いくぞ!」
「ええ、今行きます。」
王様と共に豪華な馬車に乗る。その馬車を囲むように護衛の馬車や騎士たちがいるのでよくありがちな馬車の襲撃イベントも人知れず終わっていくだろう。
獣国の首都フュールーまでは馬車で一週間と少しだ。その間、王様に色々と教えてもらおう。
案の定国王の紋章を掲げた馬車を襲うようなバカな盗賊はおらず、時おり出てくる魔物も近衛が蹴散らしていた。
教えてもらったことをまとめるとこの世界の文明レベルは中世くらいかと思ったが思ったより高く、魔道具と呼ばれる技術が発達し水洗便所や冷蔵庫、庶民の家にはないか風呂や銭湯、国に一つづつしかないが長距離連絡魔法具もあるようだ。それで国家間のやり取りなどをしているらしい。
この大陸は一夫多妻で、甲斐性があればいくらお嫁さんを作ってもいいらしく、アレックス様は正妃と13人の側室がいるらしく、子供は15人ほどだと言う。流石王様、ハーレムだ。まぁ子供ができなければ国が滅ぶからな。私も結婚の子とは考えねばなぁ。あ、15歳に若返ったんだからまだ先かと言うと15歳でも婚約くらいはするとのこと、恐ろしいな異世界。
あとお金についても聞いた、鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨とあり、鉄貨がだいたい一円位だとか、そしてひとつ上がると0がひとつ増える仕組みみたいだ。鉄貨=1円、大金貨=1,000,000円のような感じだ。
途中の村で休んだり野宿したいしているうちにラインハルト獣国の首都フュールーが見えてきた。ちなみにその間にアレックスとはタメ語で話せるくらいには打ち解けた。
そして昼ごろ。
「おい命!見えてきたぞ!あれが我が国が誇る首都フュールーだ!」
肩をバシバシと叩きながらアレックスが言う。
「わかってるよ、それにしてもすごいな城壁がデカイ。」
「オレはデカイのが好きだからな!ガハハ!」
門で並んでいる馬車を素通りしながら城壁を通過、権力ってすごいね。
馬車はそのまま王城へと入っていく。
先触れを出していたのか執事さんやメイドさんがずらりと並んでおりお出迎えしてくれる。
「おかえりなさいませ。」
白髪をオールバックに固めた初老の男性が代表して挨拶してくれる。
「帰ったぞ!皆のもの、ここにいるのが勇者召喚に答えてくださったミコト=ヤマト殿だ、無礼の無いように。」
王様の威厳をもって話す。普段はこんなできる感じの人なのか。普段とのギャップがすごいな。
「かしこまりました。私は執事長を勤めさせていただいております。サムル=セバスと申します。ご用の際は何なりとお申し付けくださいませ。」
「ありがとうございます。紹介されたミコト=ヤマトです。」
「準備は整っているか。」
「はい、謁見の間にお通しいたします。」
私たちはそのまま謁見の間へと向かった。
その先にはおっとりした雰囲気で赤くウェーブのかかった髪赤いを背中まで流している美女と、三人の人が立っていた。一人の男性は線が細く、母親似なのかおっとりした優しそうな感じの20歳後半くらいの男性、もう一人の男性は背が高く筋肉がモリモリついている髪を刈り込んだ20歳ほどの人だ、最後の女性はまだ女の子と呼べるくらいの年齢できりっとした顔立ちの美少女だ。全員赤い髪とライオンの耳と尻尾をしている。
「紹介しよう。これが第一妃のエリザベートで、長男のラクルス、次男のマックス、長女のアイーダだ。」
「はじめまして、召喚されたミコト=ヤマトと言います。よろしくお願いします。」
「親父!こんなのがいなくても俺が魔物をなぎ倒せばいい話だろ!勇者なんて要らねぇよ!」
急に叫びだすマックス様、どうやら勇者召喚などせず自分が魔王を討伐したかったらしく、怒っている。
「こんなヒョロイガキに勇者なんて無理だ!俺がやった方がいいに決まってる!」
なんだか少し頭に来るな。私は覇王の威圧を軽く発動させながら言い返す。
「私は勝手にこっちの世界に呼び出されて混乱してるところに誠実にお願いされて勇者となったんだ。なのになんだ君は、魔王を討伐できるなら召喚の前にしろ!できなかったんだろ!それをあとからごちゃごちゃ言うな!」
そう言うと威圧を受けた彼は顔を青くする。
「すまんなミコト。お前の言う通りだ。この世界の事情で呼び出しておいてそれはない。愚息にかわって謝る。」
「いや、アレックス。しょうがないのかもしれない。私はもう気にしてないよ。私も熱くなってしまって申し訳なかったね。」
「...俺もすまなかった。」
「ならこの話は水に流すよ。」
「僕はこの国の皇太子のラクルスだよ、気軽に呼んでほしいな。」
「私はアイーダよ!」
私は皇太子と握手をし、アイーダ様の手をとり手の甲に口づけすると微笑みながらよろしくと頼む。
アイーダ様は顔を赤くしている。あぁ、忘れていたけど私の顔面偏差値なめていた。好かれる分には嬉しいんだけどね。
「じゃあ自己紹介もすんだことだしパレードの話をするか!」
「ああ、わかった。」
パレードは明後日から七日間行われ、不安を飛ばして経済を活性化させるため、お祭り騒ぎにする予定らしい。私の仕事は七日間オープンカー...いや、オープン馬車に乗り笑顔で手を振るだけ。表情筋がつりそうだな。
話し合いのあと長旅の疲れが出たのか早めに就寝した。
読んでいただきありがとうございました。これさらもどうか白焔の覇王をよろしくお願い致します