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白焔の覇王  作者: もずく
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金剛 源


 俺は今日も依頼をこなす。命が元の世界に帰れる可能性を示したあともそれは変わらない。

 大進行が終わり、魔物の勢いが衰えたとは言え今は勇者の半分以上が学園に通っていて、急な対応はできないから俺たち大人が頑張らねぇといけない。

 命たちが学園に通うまでは勇者で揃ってパーティーを組んで依頼をこなしていたが今ではたまに錦とパーティーを組むくらいだ。拓のやつは基本的にソロが好きだし、錦は命とペアを組むことが多く、桃や皐月はあまり冒険者業に重きを置いていないようだ。

 元の世界で俺は現場で働いていた。現場っていったって警察のような事件現場なんて大層なものじゃなくて工事現場さ。

 その日の日当をその日の内にパチンコや麻雀なんかでスッてくるようなやつばっかりだったけど、案外そう言うやつも面白くてな。工業高校を出てから仕事に就いて、それなりに現実ってやつもわかってるつもりだ。

 現場には色んなやつがいた。ムショで玉掛けの資格を取ってシャバに出てきて堅気の仕事についたやつ、俺とおんなじ様に工業高校をでて就職したやつ、事業に失敗しておちぶれたやつ。字面にするとカスみたいなやつばっかだな、だけど現場には色んな過去を持ってる人間がいて、それぞれに悩みや不安事があってたくさんの面白い話も聞けた、たくさんの悩みも聞いた。

 だからって訳じゃねぇけど俺は人間味が溢れてる現場のことが好きだったし、自分の仕事に誇りを持ってた。

 この世界の冒険者って仕事をやってるやつも現場の人間と同じような匂いがするからなんとなく馴染みやすい。今じゃちょっとした相談役みたいな扱いになってるけどそんな仕事慣れたもんだ。

 ギルドでは争いなんて日常茶飯事で1日三回はちょっとした喧嘩が起こるからそこに入っていって話を聞いて、折り合いを付けさせる。元の世界の現場のじいさんがやってたのをみてるから簡単さ。

 今日も仲のよくなった冒険者とパーティーを作ってキングゴブリンの討伐にあたった。報酬は金貨三枚でなかなか割りの良い仕事だがその分命の危険も伴う。パーティーの面子としてはタンクとしてⅥランクのゴルゴ、メイン火力は俺と、Ⅶランク魔法使いのギーク、回復はⅥランクのレミル、斥候に同じくⅥランクのメズってやつと組んだ。

 首尾は上々、メズがゴブリンの巣を発見し拐われた人の捜索。今回は救護人がいなかったからギークが魔法で巣を掻き乱してキングゴブリンを誘い出す。ゴルゴと俺がキングゴブリンを討伐後に将を無くして混乱しているゴブリンやその上位種のハイゴブリン、ゴブリンナイト、ゴブリンメイジを掃討するだけの単純な仕事だった。

 生き物を殺すってのには現代人として当然の忌避感はあるが、この世界は殺るか殺られるかの世界だ。生きていくにはしょうがないと割りきることしかできねぇ。

 だけど俺のおかげで助かったと感謝してくれる人も大勢いるから、俺は俺の仕事に誇りを持てる。自分を正当化しようとして理由をこじつけてるのは自分でもわかっているが、生物を殺すことへの忌避感に正面からぶつかってもどうしようもねぇ。

 それなら騙し騙しでもこの世界の人のためと思って仕事をした方が精神衛生上楽だ。

 勝てない敵にわざわざ向かっていく様なバカな真似はできればしたくねぇ。克てない時は逃げればいいんだってのは、誰かの受け売りだけどな。

 おっと依頼後の打ち上げに余計な考え事してちゃいかんな。

 

 「さっすが『天槌』だなぁ!キングゴブリンの依頼がこんなに簡単に終わったのなんていつぶりだよ!」

 

 「そりゃお前たちがよく働いてくれたからな。」

 

 「謙遜はよしてくださいよ、ゲンさん。あんたがいてくれなけりゃもっと苦戦してたさ。なんせキングゴブリンの生命力はバカにならないからな。下手な攻撃すると怒って逆効果だし、力もゴブリンの比にならないくらいつえぇ。大きな怪我もなくこの依頼が終わったのはゲンさんのおかげですよ。」

 

 「やっぱり勇者ってのはすごい力ですね。同じランクなのに俺とは全然違うなぁ。もうⅧランクも目の前じゃないですか?」

 

 「そりゃあ俺が攻撃力に特化してるだけだろ。俺は足がおせぇからな。皆には迷惑かける。」

 

 「そんなぁ~迷惑だなんてとんでもないですよぉ~。回復のぉ私がいた意味ありましたぁ~?」

 

 「お前さんがいるから思いっきり戦えるんじゃねぇか。もっと自信もて。」

 

 「いや~ん!ゲンさん素敵ぃ~!このあと二人で...「喧嘩だぁー!!!」...」

 

 「すまねぇ、ちょっと行って仲裁してくる。好きに飲んでてくれ。」

 

 「あーん!ゲンさーん!」

 

 「...行っちゃったよ。あの人も鈍感だよな。元気出せよ、レミル。」

 

 「しかし流石って感じだよなあの人も。強いやつは大体どっかおかしいか傲慢なのに。」

 

 「ゲンさんはいい人だなぁ。」

 

 「私!絶対ゲンさんのハートを射止めて見せるわっ!!」

 

 「頑張れよっ!レミル!!」

 

 「応援してるぞー!」

皆様メリークリスマスです。

聖夜という響き、とてもよくないものに思えてくるのはもずくだけでしょうか?

今回もご覧いただきありがとうございました。

良い年末をお過ごしください。

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