死活問題
ジョンブル先生...ジョン=ブル先生の授業を終え、そのあとの授業は貴族の嗜みだったり作法の授業なので平民の私たちは免除されている。その空いた時間を使って私は図書館に来ていた。閑散としているのを良いことに古い文献を片っ端から読み漁る。
すると興味深い資料を見つけることが出来た、それは魔王の力は徐々にだが増している、と言うことだ。理由はわからないが文献から推測される魔王からの被害は着実に増えている。それがより一層文献を少なくさせている要因なのだがこの、文献の残り具合によってもそれは明らかだ。きっとこの先授業でやるのだろうが私たちはいつ魔物の襲撃によって学園から去るかわからない、情報は早めに集めておいて損はないだろう。
魔王の姿はそれぞれ魔物という点以外には共通点はないので、たまたま被害が増え続けているのかもしれないという見方も出来るが、私は魔王が何かしらの力を得て『魔王という種』を強化しているのではと考察する。その何かしらの力が分かればこの世界を救う手立てになるのだろうがいかんせんわからない。これは今後調べていく必要がありそうだな。
...ん?これは...!そうか!迷宮か!
この世界には迷宮と呼ばれる私たちの世界で言うところのゲームに出てくるダンジョンのようなものが存在する、そこは異次元に繋がっており、洞窟の見た目の迷宮なのに中に入ってみたら青空が広がっていたり、明らかに大きすぎる洞窟だったり、氷の迷宮、炎の迷宮など様々なものがある。
これが世界の『ほころび』ならば...?もしかすると私の考えていた『偶然』の正体に結び付くのかも知れない。楽観的に見れば私たちの世界に繋がっている迷宮があるかも知らない!
と、そこまで考えたところで今日は時間切れのようだ、三限目の授業が終わる鐘が鳴り、次はお昼休み。お昼は皆で食べようと約束してしまっているので考察もここまでにしておこう。あまり一人で考えすぎても思考が偏ってしまうかもしれないからね。皆の意見も聞いてもっと考えを練らなければ...
私は名残惜しむように古い本を一撫でして本を元あった場所に戻し、急ぎ足で教室へと向かう。
「ごめんね、待たせてしまったかな?」
「い、いえ、私も丁度今来たところです。」
「皆揃ったことだし、食堂に行こうよ。」
拓の号令にしたがい私、拓、桃、エリー、ベティで食堂に向かう。拓や桃に先程まで何をしていたか尋ねると、拓は必殺技の研究、桃は先程までの授業の復習と明日の予習をしていたそうだ。
食堂にやって来ると周りから好奇の視線を向けられる、いくら貴族には美形が多いからといっても勇者はもはや芸術的なまでに顔が整っているし、エリーもベティも十分に周りの貴族から頭ひとつ抜けているレベルで美人だ。周りから注目されるのは当然だろう。
女子生徒は拓や私と目が合うと頬を染めながらキャーキャーと周りの女子生徒になにかを話し、男子生徒は桃やエリー、ベティのことを呆けた顔で見ている。
しかし貴族という人種はプライドが高いのか一部の生徒たちは私達に嫌悪の眼差しを向けている。
食堂で食事をとるのは控えようかなと考えているといかにも貴族!という風な男子生徒が近づいてきて女性陣に聞こえないように私達にこう言った。
「お前ら周りに少し騒がれてるからといって調子に乗るなよ?ボクのような侯爵家の嫡男の手にかかればお前らなんて簡単に潰せるんだからな?」
おっといけない、拓がキレそうな雰囲気だ、そういえばこの生徒はたしか...
「流石はモヘンロ侯爵家の嫡男様ですね。」
「ん?ボクのことを知っているのか?ならば頭が高いんじゃないか?ほら、謝れよ。」
私はそっと彼に近づいて彼に耳打ちする。
「はっ!それがどうした?ボクを脅す気か?正気か?」
「君はあまり頭の回転が良くないようだね、私とアレックスは仲が良いんだよ?うっかりさっき言ったことを彼にしゃべってしまうかもしれないかな。」
その言葉を聞いた彼は顔を青ざめさせて謝りながらすがりついてくる。
「拓、どうする?許すかい?」
「そんなことより命がなに言ったかすげぇ怖いんだけど...まぁそんなに謝ってるし、許すよ。」
「だそうだよ、ほら。もう離れてくれないかな?あと、今後の身の振り方を考えておくんだね。」
モヘンロ君が逃げるように食堂から出ていったのを見送ると適当な席に座り、料理をオーダーする。流石は王族や貴族が通う名門学園なだけあり、まるでレストランのような雰囲気だ。大学の学食とはまるで違う。流石にコース料理は出てこないが高級店と変わらないような料理が出てくる。私が頼んだのはフレーバーフィッシュのポワレとこの世界の野菜のテリーヌ、バケット、コーヒーだ。まずいな、いや料理はとても美味しいんだが...
「「「米が食べたい...」」」
勇者組三人の声がハモった。
毎度どうもありがとうございます
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戦闘パートがなくて少し寂しいです。