賢者の帰還
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とりあえず先ずは屋敷の中を見てみようと思い至った私は屋敷にはいる。白黒の外観と同じく中もモノクロを意識したデザインでなかなか好感を持てた。公爵様は私とずいぶんとセンスが似かよっているらしい、私の部屋以外は家具を買い換える必要はないかもしれない。
ひとまず自分の部屋を決めるべきかと思い一通り部屋を見て回る。一階は談話室や客室、パーティーを開くためのロビー、応接室、厨房、風呂、などがありあまり住む場所はなかったため二階に向かうと客室が多数あり、住むならここかと心にとめ。三階に向かうと書斎や高級応接室、他と比べ豪華な客室があり、書斎に多数の本があったのでそれを読みたいがために三階に住むことを決意した。問題は部屋だがフロアの真ん中に大きな部屋があり、サラがそこを薦めてくれたのでそこに決定。
その部屋もモノクロでなかなか私の趣味にあっていたがあくまで目標はヒュールーの城の晩餐室なので家具屋に見に行く、行き先はもらったカードの中にあったところだ。
サラとともに城前の公園にまっすぐに通っている大きい道を歩き、目的の店に行く。そこはやはり上級冒険者や貴族を相手にしている店だけあり高級感漂う落ち着いた雰囲気の店だ。その店、マルコフ商会の扉を開け中に入りもらったカードを見せると店員はゆったりとした仕草で頭を下げて代わりに高価な服を着た恰幅のいい男性が出てきた。
「我がマルコフ商会へようこそ、勇者様。本日は家具をお求めですかな?」
「ええ、あとは家具の買い取りもお願いしたいのですが。」
「かしこまりました。あとで使いの者を送りますのでお任せください。」
「買い取りの際はサラに一通り任せていいかな?」
「ええ、それが使用人の勤めですから。」
「ありがとう、じゃあ買い物をしようかな。」
私は一通りの家具を買ってから店を出る。ちなみに購入したのは屋敷の景観と似合うような黒い革のソファー、シャンデリアはそのまま流用し、棚、ベッド、姿見など黒い革製の物を選んで買い、明日にでも、売ることになった家具と交換で運んでくれるらしい。今日は備え付けのベッドで寝るしかなさそうだ。
その日から足りない日用品などをサラとともに買い出しに出たり、家具の搬入を手伝ったり、公園で歌ったり、使用人の面接をしたりと大忙しな一週間があっという間にすぎ、やっとゆっくりと休みがとれる時間ができた。使用人の募集への応募が桁外れに多かったため、4日は面接に使ってしまったほどだ、だがその分厳選して素晴らしい人材を雇えたので価値はあったと思っている。
時間ができたので半分忘れていた、というかサラに言われるまで忘れていた騎士団から貴族がお礼をしたいと思っていることを伝えられていたのを思い出して騎士団本部へと向かう。
騎士団本部は城の西側にあり、丁度私の屋敷と城を挟んでシンメトリーになる位置だ。
大きな門と門番の兵士に出迎えられ調度品はあまりなく、質実剛健といった雰囲気の屋敷を案内の騎士に続いて歩く。
達筆な時で団長室と書かれた部屋に案内されて中にはいると騎士団長のヘルブ=アールラさんが出迎えてくれる。
ヘルブさんはエルフだが魔法より剣を好み、剣の腕で男爵家出身にも関わらずグラーダ騎士団の騎士団長、つまり人類の最精鋭のまとめやくとしてこの騎士団に君臨する強者だ。グラーダ騎士団には各国から多くの人材を派遣しており、様々な種族が入り乱れている。ヘルブさんは見た目20代だが実年齢は87歳なので争いを収めるのも上手いのだろう。
そんなヘルブさんが私が部屋にはいるなり渡してきたのは数えきれないほどの手紙だった。この量にはヘルブさんも苦笑いを浮かべておりそのほとんどがお礼にかこつけた見合い話だという。正直無視してのんびり暮らしていたいが相手は貴族、確実に面倒なことになるので一枚一枚返事を書かなければいけないだろう、中には本当に命を助けられた恩を感じて手紙をだしてきてくれた人もいるのだからまとめて捨てるなんてできはしない。
口から魂が出そうになるのをこらえながら手紙を眺めていると騎士団本部がざわつき出したのを感じたため、ヘルブさんとともに外にでて兵士にその原因を聞く、兵士曰く城で何かがあったと言うことなので大急ぎで城まで向かう、そこには予期せぬ光景が見えた。
風に舞う煌めく銀髪を左手で押さえ、血のように赤く蠱惑的に光る切れ長の瞳はすべてを見通すように、まっすぐに通る高い鼻は高貴さをかもしだし、すべてにおいてバランスのとれた性よりも美を感じさせる肉体は艶やかな、赤く、深いスリットの入ったドレスに身を包んだ絶世の美女、錦 伽凛さんが門の前で剣を抜いた兵士に取り囲まれていた。
私が伽凛さんを見ると丁度伽凛さんも私を見つけたようで泣きそうな顔をしてこういった。
「み、命。よくわかんないんだけど。た、助けてくれない?」
最近ミラクルニキというゲームにはまってしまいました。コーディネートバトル、楽しいです。
日々読んでくださっている方に感謝を。