屋敷
毎度ありがとうございます。
こちらをどうぞ
グラーダが見え始めたので門の前に並ぶ馬車の列に並び、並んでいる商人と思わしき人たちと話しながら順番を待つと案外すぐに順番となった。
「身分証の提示をお願い致します。」
「はい、でもあまり騒がないでもらえると助かります。」
「ん?はい。確認致します。...!黒!Ⅹランクの冒険者様でしたか、どうぞ。」
私たちの豪華な馬車に興味を持ち、聞き耳を立てていた商人が黒という言葉に反応する。商人達が先程の朗らかな顔から商売人の顔になって話しかけてくる。
「いやはやそのような馬車に乗っているたことから高貴な方ではと思ってはいましたがなんとⅩランクの冒険者様でいらしたとは私はバールン商会の会長をしておりますバールンと申します。ご入り用の際は是非とも我が商会をお訪ねください。」
「いやいや、上級冒険者の方には我がマルコフ商会の品がお似合いでしょう、こちら私の連絡先となっております。マルコフ商会にいらっしゃいましたときは店員にこちらのカードを見せれば最上級のおもてなしをお約束致します。」
そんなこんなで武器商人、防具商人、家具、日曜雑貨、魔導具、等々様々な商人の厚待遇を約束するカードを何枚ももらってしまった。家具やらは必要かもしれないが武器と防具は召喚すれば間に合っているので正直いらない。だが笑顔で対応を続ける。その時爆弾が投下された。門番の誰かがグラーダ防衛戦に参加していたのか、どこからか騎士団に連絡が入ったらしく、騎士団長が走って向かってきて爆弾を落とす。
「勇者様!戻ってきてくれたのですね!先の防衛戦での活躍に感謝した貴族の方々がお礼がしたいとのご連絡がいくつも届いております!時間があるときに是非とも騎士団本部までお越しください!」
そこ言葉で商人たちのアピールが激化し、もはや聞き取れないレベルで迫ってくるので逃げるように馬車に乗り込み、冒険者ギルドへと向かう。
冒険者ギルドへと入ると辺りが覇王様だ...勇者だ...とざわめき出すがもう慣れっこなので二階に行き、ギルド長へと取り次いでもらうとすぐに時間をとるとこのとでギルド長室に通された。
「よく戻ってきてくれたの、屋敷の件か?」
「はい、獣王陛下から連絡が来ていると思うのですが。」
「うむ、その通りだ、案内させよう。そうだこの機会に紹介しておこう、ヤマト殿の専属の受付を担当するミーシャだ。」
部屋に待機していた魔族の女の人が一歩前に出てお辞儀をする。
「専属というのは高ランクの中でも高名な冒険者につく専用の受付嬢だ。何かあればミーシャに相談するといい。」
「ヤマト様の専属となりましたミーシャと申します。ギルドにご用命の際は私に声をお掛けください。」
ミーシャさんは魔族特有の銀髪と赤い目をしているできる女な感じの人で、銀髪をショートカットにしていてどこか冷たいというか事務的な印象を覚える。
「はじめまして、ミコト=ヤマトと言います。これからよろしくお願いします。」
「ミーシャ、ヤマト殿を例の屋敷に案内してくれ。」
「わかりました。では、こちらへどうぞ。」
ミーシャさんに促されるままギルド長室を退出し、マイクさんを労ったあと、騎士団に戻っていいと伝えてからミーシャさんのあとを歩く。城の方まで歩き、二分ほど歩くとそこにはとてつもなく巨大な屋敷があった。
「ここが、ヤマト様への褒賞の屋敷でございます。ここは五年前に断絶した公爵家の屋敷で3階建て、家具は一通り揃っておりますが売るのもそのままお使いになるのもヤマト様のお心次第です。」
私はあまりの屋敷の広さに呆然としてしまう。巨大な門の向こう側にはサッカーコートが何個入るんだ?というほどの広さの庭があり、その迫力に負けないほどの存在感を放つ白と黒を基調にした3階建ての屋敷。こんなもの貰っていいのか?というか一人で住むのには広すぎる。そうか、召喚された仲間もこの屋敷に住まないか聞いてみよう。半分現実逃避しながら思考に耽っているとミーシャさんが恐る恐るといった風に聞いてきた。
「お気に召しませんでしたか?」
「い、いえ、そんなことはないんですが。こんなに広い屋敷を貰ってどうしようか考えていたところです。」
「そうですか、それはよかったです。」
ミーシャさんが微笑む、普段キリッとしている女の人の微笑みはなぜこんなに魅力的なんだろうか。そんなことを考えているとサラが少し焦った風に声をかけてくる。
「ミ、ミコト様。この屋敷を私一人で管理することはとても不可能です、心苦しいのですが使用人を雇うのがよろしいかと。」
「そうだね、サラ。すいませんミーシャさん、使用人を雇いたいのですがどうにかなりませんか?」
「かしこまりました。ギルドから募集をかけますので、後日面接のお時間を頂いてもよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ、ありがとうございます。」
「では、私はギルドに戻りますね。なにか不都合があればいつでも申し付けください。これが、私の家の住所です。」
ミーシャさんは私に名刺のようなものを渡してくる。私はそれを懐に先程もらったカードたちと混ざらないように入れてからお礼を言い、ミーシャさんはそのあと帰っていった。
「ミコト様、受付嬢は高名な冒険者の妻になりやすいと聞いたことがあります。あの女性にはお気をつけください。」
「ああ、そうだね、わかったよ。」
生返事をしながらそれより家具は自分で揃えたいなぁ。これからにでも家具屋さんに行ってみようかなと思いに更ける私だった。
お気に召しましたでしょうか
よかったらこのまま飲み続けてくださればこれに優る喜びはございません。
どうかよろしくお願いします。




