仁義と任侠の異世界 2
「え……えっと、すいません。ギルドに登録って……いや、それよりも魔物を狩るって……」
「ん? ああ! すんまへん! 自己紹介、してへんかったな。ワシは鍋島和夫。黒極会直系鍋島組の組長です。よろしゅうたのんますわ」
そういって、いきなり鍋島は俺の手を握ってきた。
……強い。握力がかなり強い。愉快なおっさんな感じではあるが、やはり、霧原と同じ感じのそのスジの方のようである。
「え、ええ……その……鍋島さん。もう一度聞きますけど、ギルドに登録するっていうのは……」
「ん? ああ! せやったな。この村のギルド、今はワシが仕切らせてもらってんねん。で、ギルドマスターはワシや」
「え……鍋島さんが?」
「せやで。まぁ、この村、ちょっと前まで……というか、今も魔物に偉く迷惑受けててなぁ。そこで、本家に命令されたんやけど、ワシの組でなんとかしろ、って異世界送りやで。そこから魔物をワシの組がちょーっと掃除したらなぁ、この村から偉く感謝されてもうて、村の名前はワシの名前になるわ、ギルドマスターに就任するわ……トントン拍子に事が進んでもうたんや」
明るい感じでそう話す鍋島。トントン拍子……というか、鍋島の話を総合すると、この村はヤクザがギルドマスターの村、ってことになるではないか。
「つまり……この村は黒極会のシマってことですか」
霧原が重々しい声でそう言った。つまり……俺は異世界に来ても、ヤクザからは逃れられていないということになる。
「おお、せやで。まぁ、詳しい話は明日からするとして……伊澤さんと霧島ちゃんが今日から住む場所、紹介せなアカンよなぁ」
「え……住む場所、あるんですか?」
俺は思わず驚いてしまった。すると、鍋島はキョトンとした顔で俺を見る。
「……当たり前やろ。なんや。馬小屋にでも泊まらされると思っとったんか?」
「い、いえ……てっきり、もっと酷い待遇かと」
「あはは! んなわけあるかい! さて……ノエルちゃん、お二人さんを案内してくれへんか?」
鍋島がそう言うと、ノエルは無邪気に頷いた。
「はい! では、ギンジ、タカヤ。行きましょう!」
そう言ってノエルはギルド内部から出て行ってしまった。俺と霧原も仕方なく、ノエルの後を付いて行ったのだった。




