仁義と任侠の異世界 1
「ここ! この村のギルド!」
ノエルは元気にそういった。
ギルドって……よく冒険者が仕事なんかを紹介してもらったりする場所だ。
実際、俺と霧原が連れて来られたのは、剣や鎧で武装した何人かの男たちが集まっている場所だった。
「ナベシマさん、呼んでくるね!」
そういって、ノエルはそのままギルドの奥へと行ってしまった。
「はぁ……なんなんだよ、ここ……」
「おい」
と、霧原がいきなり話しかけてきた。
そういえば、完全に今、この白スーツ極道と二人きりになってしまったのであった。
「え……な、なんですか?」
「……ギルドって、なんだ?」
「え……あ、ああ。霧原さん、ゲームとか……やらないんですか?」
「ゲーム? テレビゲームのことか……やったことねぇな」
「そ、そうですか……えっと、そういうゲームでモンスターを倒したりするタイプのゲーム、あるんですよ。そこでクエストを紹介してもらったりするところ……っていえば、わかりますかね?」
俺がそう言うと、霧原は鋭い目つきで俺を見ていた。何か、カンに触るようなことを行ってしまっただろうか……
「……なるほど。職安みたいなもんか」
「え……ま、まぁ、そんな感じですね」
ハローワークと同じと言っていいのかわからなかったが……まぁ、そう理解してもらえば言い。
そもそも、霧原にギルドの説明を詳しくする必要はないのだ。こんな怖いヤツにギルドのことをわかってもらう必要はない……
「いやぁ! よく来たなぁ、お二人さん!」
と、いきなり妙に明るい声が聞こえてきた。
俺と霧原は同時に振り返る。
そこに立っていたのは……おっさんだった。
髪は七三分けで、アロハシャツのような服装……黒縁の眼鏡をかけた、ニコニコしたおっさんである。
「……鍋島の親父さん」
「え……この人が?」
思わず霧原の方を向いてしまった。霧原は静かに頷いている。
「あはは! 霧原ちゃんか! いやぁ、ノエルちゃんと兄弟から話は聞いとるで。派手にやらかしたそうやないか?」
鍋島
「……すいません」
「ええんや! まぁ、こっちの世界くれば問題なしやで! で、そっちの人が……伊澤さんやろ? 借金、一千万円、大変やのう。難儀なことやで」
と、鍋島は心配しているのかいないのか、よくわからない表情で俺にそう言ってくる。
……というか、このインチキ臭い関西弁をしゃべる男が、近藤と同じヤクザなのか? 信じられないが……
「でも! 大丈夫やで! このナベシマ村のギルドに冒険者として登録して! バシバシ魔物を狩って! 借金、返していきましょ!」
と、鍋島は俺に、いきなり、よくわからない現実を突きつけてきたのだった。




