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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第三章 異世界運び屋稼業
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王都への道 4

「……霧原さん」


「なんだ」


 俺は隣に座っている霧原に訊ねる。


「……ここって、異世界ですよね」


「ああ、そうだな」


「……俺たち、今何やってんです」


「何って……移動しているんだ」


 移動……霧原の言うとおりだ。確かに移動している。


 しかし、異世界ファンタジーの移動といえば……転移魔法だろう。


 それができないならば、せめて馬車とか……そういうのが定石である。


 だが、今、俺たちはそのどちらでもない移動方法を用いている。


「じゃあ……なんで俺たち、軽トラの荷台に座っているんですかね」


 そう。俺と霧原は今、軽トラの荷台に座っていた。道が悪いため、時折ガタガタと揺れる……それ以外は完全に軽トラに揺られているだけの存在だ。


「なんで、って……二人乗りだからだろ」


 その通り。運転は唯一運転ができる里見。助手席にはノエル……結果として俺と霧原は荷台に座ることになった。


「いや、まぁ、そうなんですけど……」


 俺が言いたいのは……どうして異世界に来て、移動手段が軽トラなのか、ということである。


 無論、親しみのある移動方法ではある。だけど……あまりにも情緒がなさすぎるではないか。


「なんだ。歩いて行きたかったのか?」


「……違いますよ。はぁ……っていうか、霧原さん、運転できないんですね」


 そう言われて霧原は少しバツの悪そうな顔をする。確かに意外だった。どう考えたって運転はできそうだったからである。


「ああ。まだ免許、持ってないからな」


「免許って……ここ、異世界ですよ? 別に免許なんて必要ないでしょ?」


「そうかもしれんが、そもそも、俺は運転したことがない。近藤の親父が運転は二十歳になってからだとか言ってたからな。なった途端にこの世界に送り出されちまったから……」


「……え? 二十歳……霧原さんって……二十歳なの?」


 俺は思わず唖然としてしまった。霧原は相変わらずの仏頂面で小さく頷く。


「ああ、そうだ。お前は……違うのか?」


 霧原も少し怪訝そうな顔をする。もしかして……霧原は俺のことを、俺と同い年だと思っていたのか……


「あ……うん。一応今年で、22歳」


 俺がそう言うと霧原は少し気まずそうな顔をした。俺もものすごく気まずかった。


 しばらく軽トラがガタガタと揺れる……俺も霧原も何も喋らなかった。


「……なぁ。その……もう一つ聞いていいか?」


 と、霧原が遠慮がちに話を再開する。


「え……な、なんですか?」


 俺がそう返事すると、霧原は眉間に皺を寄せる。


「……敬語はやめろ。年上なんだから」


「あ……あ、ああ。えっと……何?」


 それから少し迷ったように霧原は黙った後で、俺に聞いてきた。


「……里見の奴は、何歳なんだ?」


 その質問を聞いて、俺は何も言えなかった。ただしばらく軽トラの振動に揺られていた。


「あー……そういうのは……聞かない方がいいんじゃない?」


「……そうか」


 俺がそう言って、俺と霧原の会話は一端終了したのだった。

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