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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第三章 異世界運び屋稼業
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好機の到来

「……はぁ? スカウトって……どうやって?」


 流石に俺も驚いてしまった。あまりにもいきなりわけのわからないことを言われたからである。


 しかし、黒服の佐崎は、表情を変えることなくその先を続ける。


「無論、方法は一つです。王都に行って、本店から女の子を引っ張ってきてほしいのです」


「え……王都? 本店? ちょ、ちょっとまって……そんないきなり色々言われても……説明してくれませんか?」


 俺がそう言うと佐崎は小さく頭を下げる。


「申し訳ない。まず……王都とは、この世界の首都……皇帝がいる都市です」


 ……なるほど。この世界どうやらいわゆる異世界の決まりごとにならって、どうやら王様がいるらしい。そして、その拠点も。


「しかし……本店って?」


「ええ。本店は王都に出店している店です……無論、それは黒極会だけが仕切っているわけじゃないんですが……便宜上、本店って呼んでます」


 よくわからないが……とにかく、この閑古鳥が鳴いているキャバクラよりはマシな店が、その王都とやらには存在しているらしい。


「……でも……仮にですよ? 王都まで行けたとして……本店から女の子、引っ張ってこられるんですか? だって、本店って……名前的にはどう考えてもここより給料いいでしょ?」


 そう言うと、佐崎は小さく頷いたが、先を続ける。


「ええ。もちろん。ですが、本店は競争が激しい。上位十人でなければ、給料はここと似たり寄ったりでしょう。ですが、もし今ここに誰か女の子を連れてこられれば、本店とまではいかずとも、本店の最下位よりはマシな給料を払うことは可能です……そう言えばきっと来てくれる女の子もいると思うのです」


 佐崎は真面目な顔でそう言っていた。


 どうやら、マジで女の子をこの店に連れてきてほしいらしい。


「……約束できませんよ? 俺、スカウトなんてやったことないし……女の子を連れてくるのも難しそうだし……」


 俺がそう言うと、佐崎はポケットに手を突っ込んだ。まさか、やらなければ今ここで消されてしまうのか? と思って、俺は思わず身構える。


 しかし、佐崎が取り出してきたのは……札束だった。


「え……これは?」


 しかも、相当な大金……ざっと見てもそれこそ、1億ペスカくらいはありそうである。


 つまり……今俺の目の前には100万円がポンと置かれているのである。


「これは、前金です」


 佐崎は渋い声でそう言った。俺は思わずゴクリと生唾を飲み込む。


「もし、女の子を一人でも連れてきてもらえれば……もう1億ペスカ、追加しましょう」


「え……じゃ、じゃあ……一人以上だったら……」


 俺がそう言うと佐崎はもちろんだという顔で頷く。


「ええ。いくらでも追加します。これは、私個人の以来です。親父は関係ない。この金もこの店の金だ……伊澤さん。アナタを見込んで頼んでいるんです……どうか、お願いします」


 佐崎はそう言って、頭を下げる。


そう言われてしまっては……俺もやらざるを得ない。というか、やるに決まっている。


「……わかりました。乗ります。この話」


 俺はそう言った。どうやら、ようやく俺にも運が回ってきたらしい。


「やりましたね……伊澤さん」


 そういって、卑屈な笑みを浮かべる里見……こんな機会を得ることが出来たのも、この里見のおかげ……もしかすると、俺にとってこの里見は割りかしアゲマンなのでは? なんてことを俺は思ったりしたのだった。

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