夢の場所へ 1
「……はぁ」
俺は思わずため息をついてしまった。
先程の西森との邂逅を通して……俺はほとほとこの異世界が少し……というか、かなり狂っていることが理解できた。
まぁ、狂っているというか、狂わされているというか……
しかし、それと同時に俺の中には一つの結論が出た。
この異世界には……今まで俺が生きてきた世界のルールは通用しない。
おまけにこの世界では様々な面倒なルールが存在しない……それを理解した上で活動しなければ、上手く立ち回れないということだ。
俺は今一度、先程西森から受け取った金を確認する。かなりの重さだ……
俺もこれくらい稼ぐことができれば……借金返済も現実的になってくるというものである。
問題は……その手立てをどのようにするか、だ。
既に賭け事では大失敗している。つまり……それ以外の選択肢を新しく開発しなければいけないのである。
「あの……伊澤さん?」
と、俺がそんな風に悩んでいると、里見が俺に話しかけてきた。
「え……あ、ああ……なんですか?」
「その……何か悩みでも?」
心配そうな顔で里見は俺のことを見る。
悩みといえばそうなのだが……コイツに話したところで何も解決はしない。
「あはは……いえ、別に……」
俺がそう言うと、さすがに俺があまりにも適当に返事したのがわかったのか、更に心配そうな顔で里見は俺を見てくる。
「その……もしよかったら何ですけど……今日の夜、お話しませんか?」
「え? お話って……別にいいですけど……なんだか、すいませんね。あんな狭い部屋で」
そう言うと里見は首を横に振る。
「いえ、そうじゃなくて……今日は、私のお店に来てください」
「……へ?」
そうして、またしても、俺は変なことに巻き込まれようとしていたのだった。




