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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第三章 異世界運び屋稼業
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完全なる注文 9

「いやぁ、どうも。ご苦労様です。私、案内人の西森です」


 村に着くと、鍋島が言っていた通りに、案内人……西森が俺たちを迎えてくれた。


 西森は至極流暢な言葉遣いだ。見た目はどう見ても異世界人だが……俺はさすがに気になった。


「あの……ちょっといいですか?」


「はい? なんでしょ?」


「その……アナタ、この世界の人ですか?」


 俺がそう尋ねると、キョトンとした顔で案内人は俺のことを見る。


「いえ。私もあなた達と同じ世界からこっちに来た人ですよ。第一西森って名前じゃないですか」


「え……そ、そうなんですか?」


 どう見ても……というか格好からしてこの世界……つまり、異世界の方の住人にしか見えなかった。それぐらい馴染んでいるのである。


「あはは。まぁ、かれこれ五年目ですからねぇ……」


「え!? 五年目!?」


 俺と里見は思わず顔を見合わせてしまう。


「そ、その……アナタも借金ですか?」


 里見が心配そうな顔でそう尋ねる。


「ん? ああ、いや。違いますよ。こっちの方が商売しやすいからです」


 商売……その言葉が妙に引っかかる。しかし、なんとなくだが……今まで既に培われてきた危機察知能力が、俺にそれ以上のことを聞くのをとどまらせた。


「ああ、じゃあ、商品の確認を」


 そういって、案内人は俺にアタッシュケースを要求する。そして、俺はアタッシュケースを渡した。


 案内人はすぐさま中身を改める……中身は……


「え」


 俺は思わず絶句してしまった。それは……粉だった。


 粉末状の白い物体……極道、白い粉……


「うん。確かに、『ホワイトパウダー』だ」


 西森は満足そうに頷く。


「……え。ちょ、ちょっとこれって……」


 俺が信じられない様子で案内人に尋ねると案内人は何食わぬ顔で俺を見る。


「ええ。私達のいた世界では違法な薬物ですね」


「ちょ……そ、そんなものをこの世界で捌いているんですか!? そ、それって……」


「あはは。いいんですよ。ここの連中はこれを『ホワイトパウダー』って呼んでいて、体力回復のアイテムだと思っているんです。特に冒険者や兵士には必須のアイテムですから……あ。アナタもお一つどうです?」


 そういって、アタッシュケースの中に入っていた一袋を俺に渡してきたので、俺は全力で拒否した。


「そうですか……まぁ、いいでしょ。これ、代金です」


 そういって、西森はズシリと思い布袋を手渡してくる……相当な金額だった。


「こんなに……いいんですか?」


「いえいえ。それは鍋島さんに渡してください。アナタ達への支払いは鍋島さんから出るでしょう」


 そういって、西森はアタッシュケースを手にして歩いて行く。


「じゃあ、私はこれから仕事なんで。また、よろしく」


 そういって、案内人……というか、売人の西森は俺たちのもとから去っていってしまった。

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