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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第三章 異世界運び屋稼業
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完全なる注文 7

「……はぁ」


「あの……大丈夫ですか?」


 そう言われて、俺は声のした方を見る。


 隣には、顔立ちは整っていて美人では有るのだが、いかにも幸薄そうな女が微笑んでいた。


「え……あはは……いえ。今日二回目のお使いなんで」


「え……そう……なんですか」


 そういって、里見エレナは驚いた。


 鍋島から言い渡された二回目のお使いクエスト……今度はノエルと……ではなく、里見と一緒に、隣の村まで行ってこいというものであった。


 相変わらず用心棒の霧原がいなくて不安ではあるが……仕方ない。


「……しかし、これ、中身なんだろう」


 俺はそういって、再び鍋島から渡されたアタッシュケースを見る。


 今度は先程よりも軽いので……銃器ではないようである。


「ああ……それ、お薬ですよ」


「え? お薬?」


 一瞬、ヒヤッとした。


 極道モノから渡された中身がお薬のアタッシュケースって……どう考えてもそういう……


「それ、この世界の冒険者の人達が使うそうです。私は使ったことないですけど……」


「え……あ、ああ! 回復薬ね!」


 思わず俺は納得してしまった。


 いや、普通に考えればその通りである。いくら極道から渡されたからと行って……ここは異世界だ。


 お薬といっても、そういう用途のものに限らないだろう。


「はぁ……」


 と、今度は里見が大きなため息を付いた。


 ……そういえば、この幸薄そうな女とはあまり会話していないし、コイツがどういう奴かもよくわかっていない。


「……えっと、里見さん」


「はい? なんですか?」


「里見さんは……なんでこの異世界に来たんでしたっけ? 里見さんも……借金ですか?」


 今更ながら、俺はそう聞いてしまった。すると、里見は自嘲気味に微笑んで俺を見る。


「ふふっ……そう見えます?」


「え? あ、いや……あまりそういう風には……借金とかしなさそうだし……」


「……騙されたんです」


 と、里見はニヤニヤ笑いながらそう言った。


「え……騙された?」


「……結婚を約束した人がいたんです。その人はあまり働くとかそういうことはしなかったんですけど、私は支えてあげたくて……でも、ある日家に帰ったら……」


「帰ったら……?」


「フフッ……お家にお金がぜーんぶありませんでした。おまけに私の名前で借金までしていて……それで私、この世界に……」


 ……重い。


 俺の事情よりも数十倍は重い。


「……でも、いいんです。この世界で会った人……特に借金のためにこの世界に来た人は……みんなあの人に似ていましたから……」


 そういって、里見は俺のことをうっとりと見つめる。


 気まずくなって俺は里見から顔をそむける。


「……俺は、借金返して、元の世界に戻るんで」


「ええ……一緒に、頑張りましょうね」


 嬉しそうにそう言う里見。


 ……ある意味、この里見エレナは……ノエルより怖い女だと感じたのだった。

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