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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第三章 異世界運び屋稼業
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完全なる注文 5

「……つまり……俺達は運び屋の真似事をさせられたってことか?」


 帰り道、俺はノエルに訊ねる。


 ノエルは立ち止まり、俺の方を見ると、小さく頷く。


「そう」


「……鍋島さんは、なんで報酬なんて言ったんだ? っていうか、ホントの報酬は?」


「そんなもの、ない」


 ひどく冷たい調子で、ノエルはそう言った。


「え……ない? ふ……ふざけんなよ! あんなに危険な思いしたのに……タダ働きかよ! っていうか、ノエル! お前だってそうだろうが! こんなガキの使いみたいな真似させられて……いいのかよ?」


 思わず俺は怒ってしまった。しかし、ノエルはどこか寂しげな表情である。


「仕方ない。これ、必要な仕事」


「へ? 必要な仕事?」


「……オーク、危険な生物。放っておけば村、簡単に襲ってくる。だから、アイツ等、抑えておくのに金と武器、提供する必要、あり」


 そういって、ノエルは俺のことをジッと見る。その青い瞳は……あまりこれ以上多くを語らせるなというような警告を発していた。


「え……じゃあ、そのために、鍋島さんはそれを分かっていて……」


「……オーク、魔法使えない。だから、魔法使える奴らに対抗するため、銃、使う」


「はぉ? ……って、おいおい。それって、つまり、俺達がやったことは……それこそ……」


 ノエルは小さくため息を付いてから、呆れたように俺のことを見る。


「……だから、言った。この仕事嫌な気分になる」


「お、おいおい……いいのかよ? ノエル……確かにお前はその……極道の関係者かもしれないけど……それじゃあ、この世界の治安は……」


 するとノエルは自嘲気味に笑ってから、冷たい瞳で俺のことを見る。


「こんな世界、私、嫌い。どうなってもいい」


 それだけ言うと、ノエルはまた歩き出した。


 目の前の金髪碧眼の少女……彼女は、異世界からの優しい訪問者ではないことはわかっている。


 でも、それ以上に何かを抱えている……俺はその時明確に確信したのだった。

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