完全なる注文 3
「え、えぇ……ど、どうすんだよ、ノエル……」
「……落ち着いて。ギンジ」
ノエルはひどく落ち着いていた。
そうか、ノエルは前にもこの仕事やったことがあると言っていた……だから、こんな状況にも慣れている、ってことか。
「うぉ……うぉぉぉぉぉ!」
と、オークの一匹が雄叫びをあげる。
オークといえば、異世界ではどう考えても敵っぽい存在だが……大丈夫なのだろうか。
「ギンジ、アタッシュケース、頂戴」
「え……な、なんで?」
「なんでも」
ノエルに言われるままに俺はギンジにアタッシュケースを渡す。するとノエルはそのままオーク共の方へ向かっていく。
「お、おい……ノエル……」
そして、ノエルはゆっくりとアタッシュケースを開く。中に入っていたのは……
「え……銃……?」
見るとそこに2、3丁の拳銃が入っていた。形から見ると俺がこの前使ったトカレフだ。
そして、ノエルはすぐに俺のもとに戻ってくる。
それと同時にオーク共はアタッシュケースに近づいてきたかと思うと、そのまま拳銃を手に取った。
「ウォォォォォォ!」
拳銃を手にしたオークが雄叫びを上げる。
「え……どういうこと?」
「……武器提供」
ノエルが嫌そうな顔でそう言う。武器提供……それって、どういう……
その瞬間だった。
バァン!というけたたましい音が鳴り響く。
「は?」
俺は思わず唖然としてしまう。
見ると、オークの一匹が……どうやら発砲したようだった。
「あ……アイツら……何やってんだ……?」
「試し撃ち。商品、使えるか試してる」
……段々と意味がわかってきたが……どうやら、これは……
「……つまり、俺たちは……オークに重火器を提供しているってことか?」
俺がそう言うとノエルは大きく頷く。
……この瞬間、またしても鍋島によってとんでもないことに巻き込まれてしまったのだと、俺は理解したのだった。




