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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第三章 異世界運び屋稼業
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完全なる注文 2

「……ギンジ。なんでこの仕事、引き受けたの?」


 仕事を受けた後で、ノエルと俺は鍋島が指定していた目的地へと向かっていた。


 鍋島が提示した条件は3つ。


 まず、仕事を遂行するのは、俺とノエルだけ。霧原や里見には知らせるな、と言っていた。


 そして、目的地にも俺とノエルとだけ行ってもらう。


 俺には鍋島からアタッシュケースを渡された。結構ズッシリしていて重い。


 最後の条件。これが一番大事だった。


「……報酬は、前払い」


 俺は鍋島に渡された1億ペスカ……相当の価値があると言われた金のメダルを見て微笑んでしまった。


 この世界の貨幣、紙幣の制度はこの金のメダルがほぼ最高点。1億ペスカメダルと云うらしい。


「ふふっ……これで当分は遊んでくらせるな」


「……ギンジ、借金は?」


 そう言われて俺は思い出した。この異世界での生活が長すぎて忘れかけていたが……そもそも借金を返して俺は元の世界に戻るのだった。


「……わかってるって。この金貨は大事にしないとな」


 そういって俺はメダルをポケットの中にしまった。そして、今一度重すぎるアタッシュケースを抱えて歩き出す。


「しかし……場所はノエルが知っているって言ってたけど、お前は前もこの仕事、やったことあるのか?」


 俺が訊くとノエルは小さく頷く。


「……知っている仕事。あまり……オススメできない」


「え……もしかして、結構危険なのか?」


 ギョッとしてそう訊ねるが、ノエルはそこに関しては首を横に振る。


「……そんなこと、ない。ただ……嫌な気分になる」


 ノエルは辛辣そうな顔でそう言った。嫌な気分……どんな気分だよ。


「……まぁ、とにかく行ってみればわかるよな。報酬は貰ったし……きちんと仕事をこなさないとな」


「……ギンジ、調子、良い」


 ノエルにそんなことを言われたが俺は気にしなかった。


 それから数十分ほど、俺とノエルは歩いた。そして、俺が段々と疲れてきた辺りで、ノエルは立ち止まる。


「ここらへん。ここにいれば、向こうから、来る」


「はぁ? どういうことだ?」


 俺は理解できなかったが立ち止まった。


 向こうから来る……誰か来るってことなのか?


 そして、それから数分後のことだった。


「来た」


 ノエルがそういう。俺はそういってノエルが見る方向を見る。


 ドスドス……低い足音が聞こえてきた。


 それが何体も。


「え……ど、どういうこと?」


 と、俺が唖然としていると、目の前に現れたのは……


「ウォォォォォ!」


 見ると、目の前には……俺の慎重の二倍はありそうな人間……いや、違った。


 顔はとても醜悪な豚のようなもので……細い瞳で俺を見ている。


 そして、俺は理解した。


「あ……お、オークか!」


 俺がそう気付いた時には、既に十体ほどのオークらしき化け物に、俺とノエルは囲まれてしまっていたのだった。

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