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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第二章 異世界賭博放浪記
56/76

本当に怖いのは

「……た……助かった……」


 ギルドからアパートに戻る途中、俺は思わずそう言ってしまった。


「……てめぇ、反省してるんだろうな?」


 と、背後から霧原のドスの聞いた声が聞こえてくる。


「ひっ……わ、わかってますよぉ……」


 俺がそう言っても霧原は俺を睨みつけてくる。


 最後の勝負は……霧原の勝ちだった。


 コップの中には玉が入っていなかった。


 ただまぁ……それがわかった途端、アリッサムは泣き出して鍋島に謝るし、鍋島は面倒くさそうにそれに対応するわで……結局、俺の賭け事の結果は有耶無耶になってしまった。


「……しかし、霧原さん、あそこでよくあそこまで強気になれましたね」


 思わず俺は霧原にそう言ってしまう。


「あ? ああ……確信があったからな。玉は入っていない、っていう」


 そう言うと霧原はチラリとノエルのことを見る。


 ノエルはニヤリとそれに対して微笑み返した。


 ……なんだか、今のやり取り……少し怪しい感じがしたが……よくわからない。


「ああ。そうだ。伊澤。お前、ノエルとの賭け事の件も無効にしろ」


 そんな矢先に霧原がそんなことを言ってきた。


「え……えぇ……な、なんで?」


「なんでもだ。オメェ、反省してないのか?」


 霧原は俺にNOと言わせない圧迫感を与えてきた……さすがに今の状況では断れなかった。


「……わ、わかりましたよ」


「まったく……後、今後は賭け事は禁止だ。当分は真面目に魔物狩りに励め」


「え、えぇ……」


「……反論、してぇのか?」


 無論、俺にそんなことはできるわけがないので……俺は頷くしなかった。


「……わ、わかりました」


 霧原は厳しい表情のままで俺の側を通りすぎていった。


「霧原さん……大丈夫ですよ。借金、ゆっくり返していきましょう」


 その後で、幸薄そうな女、里見が俺にそう言ってくる。


「そう。ギンジ、借金、ゆっくり返すべき、ね?」


 ノエルにもそう言われた……というか、これで俺はノエルにも強い態度をとれなくなったわけだが……


「……ん?」


 と、俺はそんなノエルが、手のひらに何かを握っているのを見た。俺は咄嗟にノエルの手をつかみ、中身を確認する。


「あ、ギンジ、それ――」


 そして、ノエルが手にしていた物を確認して、俺は驚いた。


「……なんで、ここに?」


 それは……鍋島が先程コップの中に入れたはずのビー玉だった。


 それを……なぜかノエルが持っていたのである。


 俺は思わずノエルを見る。


「……ノエル。これは?」


「あー……あはは……さっき、拾った……」


「嘘つけ! お前、まさか……ん? 待てよ、だけど……」


 俺はその時理解した。


 玉は……最初はコップの中に入っていたのだ。アリッサムの魔法は成功していた。


 しかし、ノエルがアリッサムが移動させたコップの中から、玉を再び自分の手の中に移動させたのである。


 つまり、先程の勝負……その時から霧原の勝利は決まっていたということになる。


 そして、霧原の先ほどの言葉……玉が入っていないことを確信していたという……


「……ノエル、お前……」


「あー……ノエル。タカヤには何も言われてない。関係ない、から……」


 そう言うとノエルはそのまま走っていってしまった。


「どうしたんですか? 伊澤さん」


 里見にそう言われ、俺は思わずビー玉を見ながら呟いてしまう。


「……やっぱり、極道相手に賭け事は……やらない方がいいみたいだ」

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